運動習慣のある人ではがん発症は減る
2008年7月11日 18:08
日常生活でよく体を動かしている人ほど、がんにかかりにくいことが厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)の大規模調査でわかった。男性ではがんのリスクが最大13%、女性では同16%低くなり、体を動かすことによりがんの予防効果を期待できるという。
1日の身体活動量(METs)とがん罹患との関連
身体活動量の最小群を「1」とした場合の比較
L:最小群 S:第2群 T:第3群 H:最大群
この研究は、厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)によるもの。全国の45歳から74歳の男女約8万人を対象に約8年にわたって追跡調査した。
アンケートをもとに、仕事や余暇の運動を含めた1日の平均的身体活動時間を、(1) 筋肉労働や激しいスポーツをしている時間、(2) 座っている時間、(3) 歩いたり立ったりしている時間、(4) 睡眠時間に分けた。次に、「MET」という運動強度を示す単位に置き換え、それに運動時間をかけた「METs・時間」に換算して算定した。得られた平均的な身体活動量をもとに、男女別に4群に分けた。
その結果、男女とも、身体活動量が多い群ほど、がんにかかるリスクが低下することがわかった。身体活動量の最小群と比較した場合、最大群のがんになるリスクは、男性で0.87倍、女性で0.84倍だった。低下の傾向は女性でよりはっきりあらわれ、さらに高齢群や余暇の運動頻度の多い群でより明確に低下傾向がみられた。
部位別にみると、男性では結腸がん、肝がん、膵がんで、女性では胃がんで、がんになるリスクが低下していた。身体活動量が低いグループには、もともと体調が良くないので運動ができないという人が含まれる可能性があるので、その影響を避けるために研究開始から3年以内にがんになった人を除いて分析したが、身体活動量が多い人ほどやはり結果は変わらなかった。
今回の調査について、研究者らは「がんにかかるのを予防できる理由は、肥満の改善をはじめ、性ホルモンやインスリン・インスリン様成長因子(IGF-1)の調節、免疫調節能の改善、フリーラジカル産生の抑制などがメカニズムとして推察されている」と話している。
高インスリン血症やインスリン抵抗性により発がん促進に重要な役割を果たしていることで知られる体内循環IGF-1が増加し、またIGF結合タンパクが減少する。身体活動を増やすことにより、インスリン感受性を高め、空腹時のインスリン量を低下させることで、インスリン抵抗性が改善すると推察されている。また、身体活動により免疫調節能の改善による効果もがん予防に寄与していると考えられている。
厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」