β-カロテンが不足していると胃がんリスクが高くなる
2008年7月18日 16:50
緑黄色野菜や果物に多く含まれる「ベータ(β)-カロテン」が不足していると、胃がんにかかるリスクが約2倍になるという調査結果が発表された。ただし、β-カロテンを十分にとっている人がさらに摂取量を増やしても予防効果の恩恵は期待できないという。
緑黄色野菜や果物に含まれるβ-カロテン
この調査は、厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」によるもの。全国の40歳から69歳の男女約3万7000人を対象に、10年前後追跡して調査した。
研究開始時に健診などで提供してもらった血液をもとに、期間中に胃がんにかかった511人と、そうでない511人を比較分析した。血漿中のβ-カロテン、リコピンなど「カロテノイド」を測定し、値によって4つのグループに分け胃がんリスクを比較した。
血中β-カロテン濃度と胃がんリスク

β-カロテン濃度
(各グループの平均値μg/dL)
カロテノイドは野菜や果物などに含まれる赤や黄色の天然色素。体内でビタミンAに変えられ、抗酸化ビタミンとしてはたらくので、虚血性心疾患やがんなどの生活習慣病の予防につながると注目されている。β-カロテンなどのカロテノイドはニンジン、かぼちゃ、ほうれん草など色の濃い野菜、緑黄色野菜に多く含まれている。
研究では、家族歴や喫煙、肥満などの影響を取り除き解析した結果、β-カロテン濃度がもっとも低いグループは、他の3グループと比べ胃がんリスクが約2倍に高くなることが分かった。
β-カロテンを十分にとっていると胃がんリスクが低くなる傾向は、女性より男性でよりはっきりと認められた。全体に女性の方がβ-カロテンを多くとっており、研究者らは「男性は血中抗酸化物質濃度が全体的に低かった。女性ではもっとも低いグループでも、男性の平均値並の血中濃度だった」と話している。
喫煙は胃がんのリスク要因だが、喫煙している男性でもβ-カロテンを十分にとっていると、胃がんのリスクが低くなる傾向がみられた。また、女性ではβ-カロテンを必要な量を摂取している場合には、それ以上をとっても胃がんリスクは下がらないことも分かった。
研究者らは「β-カロテンが不足している人や、喫煙や飲酒の習慣がある人は、野菜や果物を積極的にとるようにしてほしい」と話している。
厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」