受動喫煙は認知症のリスクも高める BMJに発表
2009年5月18日 19:04
喫煙習慣のある人では肺がん、心疾患、脳卒中、2型糖尿病、認知症などの病気の危険が高まることが知られているが、たばこを吸わない人が受動喫煙に継続的にさらされた場合もこれらの危険は高まる。さらに受動喫煙は認知症や認知障害の危険も高めるという研究が、英ケンブリッジ大学の研究者らによって2月に発表された。受動喫煙が深刻な場合は認知障害の危険が44%高くなると研究者らは強調している。
この研究は「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal、BMJ)」に発表された。喫煙者にとって喫煙が認知症や認知障害の危険を高め、深刻な健康障害をもたらすことがこれまでの研究であきらかにされている。研究者らは発表について「受動喫煙が非喫煙者の脳機能に悪影響を与えることをはじめて確かめた大規模研究」だとしている。
受動喫煙が脳にダメージを与える
たばこの煙は喫煙者が吸い込む「主流煙」と、たばこの点火部分から立ち上がる「副流煙」に分けられる。副流煙は主流煙に比べ、ニコチン、ベンゾピレン、一酸化炭素などの有害物質が数倍から数十倍多く含まれている。
英ケンブリッジ大学のDavid Llewellyn教授らの研究チームは、50歳以上の約5000人の唾液サンプルを採集し、唾液に含まれるニコチンの副産物であるコチニンのレベルを測定した。喫煙歴を聞きだし、受動喫煙が多いグループから少ないグループまで、4つのグループに分け受動喫煙の影響を評価した。
次に認知機能を調べるための簡易テストを被験者に受けてもらい、自分の話した言葉をすぐに反唱する口頭記憶、記憶の低下、数の計算、1分間にできるだけ多くの動物の名を挙げてもらう時間定位や口頭の流暢さなどを調べた。
その結果、年齢や既往症などを調整して解析した結果、脳機能の低下と受動喫煙の量にはっきりとした関連があることがわかった。受動喫煙がもっとも多いグループでは、基準としたグループに比べ認知能力の欠如リスクが44%も高いことが示された。こうした傾向は、以前は喫煙していたが現在は禁煙しているグループと、一度も喫煙したことのないグループの両方でみられたという。
研究者らは研究について「受動喫煙が脳にダメージを与え記憶や認知機能を害し、認知症をもたらすおそれがあることが示唆された。受動喫煙は心臓病と脳卒中といった重大な健康被害にもつながる。たばこを吸う人は非喫煙者の近くで喫煙するべきではなく、公共の場所では喫煙を禁止する政策を支持する結果になった」と述べている。受動喫煙については、子供や若者の認知発達に障害をもたらす可能性についての研究も行われている。
非喫煙者の受動喫煙と認知障害の影響(British Medical Journal 2009; 338: b462)
ケンブリッジ大学リリース(英文)
関連情報
受動喫煙がもたらす健康被害について解説している。
受動喫煙(セルフメディケーション推進協議会)