お酒の飲みすぎで乳がんリスク上昇 ビール大瓶1日1本で1.7倍
2010年1月 6日 11:37
飲酒量の多い女性は、飲まない女性に比べ乳がんになりやすいことが、厚生労働省研究班の大規模疫学調査で分かった。アルコールが乳がんのリスクを高めることが、欧米などの研究で報告されているが、飲酒量や体質、環境が異なる日本人でも改めて裏付けられた。
この研究は、厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」(主任研究者:津金昌一郎・国立がんセンターがん予防・検診研究センター予防研究部長)の一環として行われたもの。1990年と93年に岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄、大阪の10保健所管内に住んでいた40歳から69歳の女性約5万人を対象に、生活習慣についてアンケート調査を実施し、その後2006年まで追跡調査した。平均約13年の追跡期間中に、572人が乳がんになった。
研究開始時、5年後、10年後の3回のアンケートの回答から、飲酒量によって「飲んだことがない」、「過去に飲んでいた」、「時々飲む(月に1〜3日)」、「週にエタノール換算で150g以下の飲酒」、「週にエタノール換算で150gより多い飲酒」の5つのグループに分けた。結果に基づいて、飲酒と乳がん発生の関連を調べた。
その結果、飲酒量が週150gを超える人では、飲んだことがないグループに比べて、乳がんリスクが1.75倍になることが分かった。さらに対象者を閉経前と閉経後に分けて調べたところ、閉経前では、飲んだことのないグループに比べ、飲酒量の最も多いグループでは乳がんリスクが1.78倍となった。
エタノール換算で150gに相当する飲酒量は、日本酒なら約7合、ビールなら大瓶約7本、ワインなら約14杯(1杯120ml)、ウイスキーならダブル約7杯程度。ビール大瓶を毎日1本以上飲んでいると、乳がんリスクが上昇することになる。

厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC Study)」
飲酒する人が乳がんになりやすい理由として、研究班は「お酒に含まれているエタノールが分解されてできるアセトアルデヒドがもつ発がん性、アセトアルデヒドによるDNA合成・修復に必要とされる葉酸の破壊、乳がんのリスク要因となる女性ホルモンなどへの影響」などの可能性を挙げ、「国際的評価と同様、日本人においても、お酒を飲みすぎないことが乳がん予防につながるのは確か」としている。
JPHC研究は生活習慣とがん・心筋梗塞・脳卒中などの病気との関係をあきらかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるために行われている。今回の研究は2009年12月に、国際的な医学誌「International Journal of Cancer」に発表された。
厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC Study)」