運動が脳細胞を活性化、認知症予防に期待 東大チーム
2010年1月27日 17:01
 年をとっても適度な運動をすることで脳が刺激されて、脳内の神経伝達物質「アセチルコリン」の量が増え、神経細胞の分裂が活発になることを、東京大学の久恒辰博准教授(脳科学)らがマウスの実験であきらかにした。研究は米科学誌「Hippocampus」オンライン版に発表された。

 運動によって中高齢者の認知機能が改善されること知られているが、研究では運動が薬剤と同様な仕組みで脳に働きかけ、脳の老化防止に働くことが分かった。運動による認知症の予防などへの応用が期待される。

海馬で新しく生まれる神経細胞
 研究チームは、記憶や学習など認知機能をつかさどる「海馬」という部分に注目。海馬では大人になっても神経細胞が新しく生まれ、数が保存されているが、年齢を重ねるほどその能力は衰える。

 生後2年以上の高齢のマウスを、回し車のあるかごで3日間飼育し、回し車のないかごで飼育したマウスと比較した。海馬の神経細胞の基になる幹細胞を調べたところ、自由に走ることのできる環境で飼育したマウスでは、平均720個の神経幹細胞が分裂していた。一方、十分に運動できなかったマウスでは平均298個だった。幹細胞の増殖率は、運動により2.4倍高くなることが分かった。

 神経伝達物質アセチルコリンの分泌が増え、海馬が刺激されたためで、薬剤でアセチルコリンが分泌しないようにした老齢マウスでは運動させても神経細胞は178個しか増えなかった。また、アセチルコリンの濃度を高めるドネペジル塩酸塩を投与すると、運動させなくても3日間で556個の神経幹細胞が分裂していることが分かった。ドネペジル塩酸塩は、認知症の治療薬の成分として世界的に処方されている。

 久恒准教授は「運動によってアセチルコリンが活性化し、神経幹細胞の細胞増殖が強まることが初めて分かった。ヒトにも同じ仕組みがあると考えられ、加齢による脳機能の低下や認知症を防ぐことに役立つのではないか」と述べている。

東京大学大学院新領域創成科学研究科
Cholinergic activation of hippocampal neural stem cells in aged dentate gyrus
Hippocampus, Published Online: 6 Jan 2010

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