大豆のイソフラボンで肺がんリスク低下 非喫煙男性で最大57%
2010年2月 8日 17:53
豆腐や納豆など大豆製品に含まれる「イソフラボン」を多く摂取し、喫煙の経験がない男性は肺がんを発症するリスクが低く、最大で57%下がることが、厚生労働省研究班の大規模調査で分かった。女性でも大豆製品を多くとる人で発症が低下する傾向がみられた。
研究班の島津太一・国立がんセンター研究員らの研究チームは、岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄に在住していた45歳から74歳の男女約7万6000人を、2005年まで平均11年間追跡して調査した。
食習慣についてアンケート調査を行い、みそ汁や豆腐を食べる頻度をもとに、イソフラボンの一種「ゲニステイン」の1日当たりの摂取量を算出し、多い順に4グループに分類し、肺がんリスクとの関連を調べた。期間中に、男性3万6000人のうち481人、女性4万人のうち178人が肺がんを発症した。
年齢や地域、飲酒習慣、野菜や魚の摂取量などの因子を調整し解析した結果、男性では、全体でみるとイソフラボン摂取と肺がんリスクの間に関連はみられなかった。しかし、喫煙したことのない男性に限ると、もっとも摂取量の多いグループ(1日平均48mg)では、もっとも少ないグループ(同9mg)と比べて肺がんにかかるリスクが57%低かった。
女性でもイソフラボンの摂取量が多いほど肺がんのリスクが下がる傾向がみられたが、統計学的に有意な差は確認できなかった。イソフラボン約12mgは、豆腐では40g、納豆では1/3パックに換算される。
研究チームによると「肺がんの最大の原因は喫煙」だという。イソフラボンは化学構造が女性ホルモン(エストロゲン)と似ているため、「女性ホルモンの働きに影響を与え、肺がんの発生についても影響を与えている可能性がある」と指摘している。また、女性の肺がんのリスク低下において有意差が出なかったことについて、「たばこを吸わない女性での受動喫煙の影響や、肺がんの症例数が少ないことなどにより関連性をとらえきれなかった可能性がある」としている。
この研究は、厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)によるもので、米国栄養学会が発行する医学誌「American Journal of Clinical Nutrition」に発表された。
厚生労働省・食品安全委員会が2006年にまとめた「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」では、大豆イソフラボンのみを通常の食生活に上乗せして摂取する場合の安全性を検討し、1日当たりの大豆イソフラボンの摂取目安量の上限値を70〜75mgとし、そのうち、サプリメントや特定保健食品などで摂取する量は1日当たり30mgまでが望ましいとしている。
多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究(JPHC Study)
Isoflavone intake and risk of lung cancer: a prospective cohort study in Japan
American Journal of Clinical Nutrition, doi: 10.3945/ajcn. 2009. 28161
大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&Aについて(厚生労働省、2006年8月23日)