世界の肥満は30年で2倍に増加 国際研究で危険因子があきらかに
2011年2月21日 10:56
 肥満は世界的に増加している。世界の肥満や生活習慣病の動向を調査した国際的な共同研究によると、肥満の割合は1980年から約30年間でほぼ2倍に増えたという。

世界の肥満は30年で2倍に
米国のニュース番組より(YouTube)

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世界の肥満人口は5億人超
高血圧・高コレステロールは先進国では低下傾向
 研究は世界の約30ヵ国の300〜900万人を対象に行われた健診や疫学研究の結果を解析したもの。体格指数(BMI)、血圧、コレステロール値が1980年と2008年の間でどれだけ変化したかを調査した。

 この研究は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団と世界保健機関(WHO)による資金提供を受け、インペリアル・カレッジ・ロンドンのMajid Ezzati教授や、ハーバード大学公衆衛生大学院のGoodarz Danaei博士らによって国際的な共同研究として行われた。結果は医学誌「ランセット」に2月4日に発表された

 研究によると、2008年の時点で世界の成人の10人に1人が肥満で、1980年と比べ約2倍に増えている。概算では2008年現在、男性成人の2億500万人が、女性の2億9700万人が肥満だという。女性では肥満傾向がより強くあらわれている。

 一方、高血圧に関しては、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期圧90mmHg以上の高血圧の割合は、医療が発達している先進国では1980〜2008年でおだやかに低下したが、人口増加と高齢化の影響を受け6億人から10億人に上昇した。男性では北米、女性ではオーストラリア・ニュージーランドなど南半球でより深刻な問題になっている。

 高コレステロールの割合は、北米、南半球、欧州諸国で低下したが、東アジア、東南アジア、太平洋地域で増加した。

 「過体重や肥満、高血圧、高コレステロールは、もはや裕福な先進国だけの問題ではなくなった。現在は低・中所得の国や地域まで拡大し、全世界的な課題になっている」とEzzati教授は述べている。

BMI:日本は世界でもっとも肥満の少ない国
 BMI(ボディ・マス・インデックス)は、身長と体重から体格を示す数値で、肥満の指数として多く使われている。体重を身長の二乗で割り算出する。例えば、体重70kgで身長165cmであれば、BMI値は25.7となる。
 日本肥満学会の基準ではBMI25以上を肥満と判定するが、WHOの判定基準ではBMI30以上を肥満と判定し、25.0以上30.0未満だとOverweight(過体重)と判定する。
  • 世界のBMI値が30以上の肥満の割合は、1980年に男性4.8%、女性7.9%だったが、2008年には男性9.8%、女性13.8%に増加した。
  • 世界でもっとも平均BMI値の高い地域は太平洋諸島で34から35。南東アジアやアフリカ大陸のサハラ砂漠より南の一部の地域では70%以上が肥満。
  • 先進国で肥満度の上昇率が高かった国は米国で、10年でBMI値が1以上ずつ上昇し、2008年には男女とも28を超えた。次いで、ニュージーランド、オーストラリア、英国と続く。英国は欧州で男性が6位、女性が9位(ともに27)。
  • 日本はシンガポールに次ぎ平均BMI値が低く、男性は24、女性は22。
  • ベルギー、フィンランド、フランス、スイスではあまり変化はみられず、スイスの女性の平均BMI値は欧州で最低の24。イタリア女性でもBMI値は減少した。
  • 欧州で平均BMI値がもっとも高いのはトルコの女性、およびチェコの男性(ともに28)。
高血圧:血圧値がもっとも高いのはバルト海・アフリカ諸国
  • 未治療の患者の血圧値は、先進国では低下傾向がみられた。韓国、カンボジア、オーストラリア、カナダ、米国は男女ともに収縮期血圧の平均値が低く、男性125mmHg以下、女性120mmHg以下だった。
  • 先進国ではポルトガル、フィンランド、ノルウェーで平均値が高かった。
  • 血圧値がもっとも高かったのはバルト海や東・西アフリカの諸国で、男性は138mmHg、女性は135mmHg。この傾向は1980年代の欧米諸国でよくみられた。
  • 全世界的に男性の方が女性よりも血圧値が高いことが分かった。
コレステロール:米国など先進国では低下傾向
  • 欧州ではグリーンランド、アイスランド、アンドラ、ドイツでコレステロール値が高い(平均総コレステロール値は5.5mmol/L)。
  • 世界でコレステロール値がもっとも低いのはアフリカ諸国(平均値は4mmol/L)。
  • 先進国でコレステロール値がもっとも低い国はギリシア(男女とも平均値は5mmol/L未満)。米国、カナダ、スウェーデンでも同様の傾向がみられた。
 Ezzati教授は「多くの国や地域でBMIが増加した一方で、血圧とコレステロールが低下していることが分かったのは喜ばしい。塩分や肉類などに含まれる飽和脂肪酸の摂取を減らすなど、健康的な生活を奨励する保健指導が広まった結果とみられる」と話す。

 「肥満、高血圧、脂質異常は心疾患の危険因子となる。特に塩分の食塩摂取量を減らし健康的な食事をとることを奨励するなど、より強力な保健指導を続けることが重要だ。こうした保健政策の推進は、今年9月にニューヨークで開催される“国連総会非感染症ハイレベル会議(High-level Meeting of the United Nations General Assembly on Non-Communicable Diseases)”でも重要な議題となる」としている。

 Danaei博士は「食習慣の変化や運動不足が原因となり、世界的に肥満や生活習慣病が増えているのはあきらかだ。肥満を抑制する政策を決めるために、現状を知る必要がある。この研究は、全世界規模で主な危険因子の動向を調べたはじめての調査だ。我々は先例のない膨大な量のデータを検証し、明白な成果を得ることができた」と述べている。

National, regional, and global trends in metabolic risk factors
Global Burden of Metabolic Risk Factors of Chronic Diseases Collaborating Group
National, regional, and global trends in body-mass index since 1980: systematic analysis of health examination surveys and epidemiological studies with 960 country-years and 9・1 million participants
Lancet, Volume 377, Issue 9765 557-567, 12 February 2011
National, regional, and global trends in systolic blood pressure since 1980: systematic analysis of health examination surveys and epidemiological studies with 786 country-years and 5.4 million participants
Lancet, Volume 377, Issue 9765 568-577, 12 February 2011
National, regional, and global trends in serum total cholesterol since 1980: systematic analysis of health examination surveys and epidemiological studies with 321 country-years and 3.0 million participants
Lancet, Volume 377, Issue 9765 578-586, 12 February 2011
Obesity Has Doubled Since 1980, Major Global Analysis of Risk Factors Reveals(ハーバード大学公衆衛生大学院、2011年2月4日)

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