5月31日「世界禁煙デー」 たばこを吸わない生活習慣を拡大
2011年5月31日 11:43
5月31日の「世界禁煙デー」に、たばこを吸わない習慣を社会に広める重要性が世界中で呼びかけられた。喫煙習慣は健康に悪影響を与える。禁煙はがんや循環器病などの生活習慣病を予防するうえで必要だ。世界保健機関(WHO)は1988年に世界禁煙デーを定め、2003年にたばこ規制条約を採択した。
世界で喫煙と受動喫煙により亡くなる人は600万人
2003年5月に世界保健総会で「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が採択された。締約国数は2004年に40ヵ国に達し、2011年現在では170ヵ国を超えている。日本では2005年2月にこの条約が発効した。
たばこ規制条約は、世界保健機関のもとで作成された保健分野でのはじめての多数国間条約。喫煙が健康に及ぼす悪影響をなくすことを目的に、たばこの広告・包装上の表示などの規制と、たばこの規制に関する国際協力が定められている。
このように、国際的なたばこ対策の取組みが行われているが、世界のたばこ製品の消費量はむしろ増加しているという。先進国ではたばこ対策が重要な保健政策のひとつとして取り組まれており、喫煙率は低下傾向にある。喫煙者が集中しているのは低所得や中所得国だという。
世界保健機関は今年の世界禁煙デーに合わせて、次のファクトシートを発表した――
- 喫煙者の半分はたばこが原因で亡くなる。
- 世界で喫煙と受動喫煙により亡くなる人の数は年間600万人。6秒に1人がたばこが原因で亡くなっている。
- 非感染性疾患(NCD)で亡くなる人は全体の63%。喫煙はNCDの最大の危険因子となる。
- 有効な対策をしないと、たばこによる死亡者数は2030年までに年間800万人以上に増加する。
- 世界の喫煙者数は約10億人。その80%以上は低所得・中所得国に集中している。
- 所得の多い先進国では喫煙率は低下しているが、世界的にはたばこ製品の総消費量は増加している。
受動喫煙による健康被害も深刻
たばこの害は喫煙者本人に限られれるものでない。喫煙者の周囲にいる人が受動喫煙により受ける健康被害も深刻だ。喫煙者が吐きだす煙にはニコチン、タール、一酸化炭素など多くの有害物質が含まれる。たばこの煙には4000種類以上の化合物が含まれ、うち250種類以上は有害物質だ。ヒトへの発がん性があるものも50種類以上が含まれるという。
レストランやオフィス、公共の場や職場での受動喫煙は、がんや心筋梗塞などの循環器病の危険性を高める。たばこ規制条約では、分煙の徹底と効果の高い分煙についての規制も求められている。
受動喫煙は成人では、冠性心疾患を含む深刻な心血管疾患、呼吸器疾患、肺がんを引き起こす。妊娠している女性では、出産時低体重の原因となる。
世界保健機関のファクトシートには次のことが記されている――
- 受動喫煙を規制する法律によって保護されている人はたったの5.4%。
- 受動喫煙から保護されている人の数は、2億800万人(2007年)から3億6200万人(2008年)に74%増加した。
- 受動喫煙が規制されているのは、世界の人口最多の100都市のうち22都市。
- 世界の子供の約半分は、たばこの煙によって汚染された空気を毎日吸っている。
- 世界の子供の40%以上は、少なくとも片親がたばこを吸っている。
- 受動喫煙によって寿命が短くなる。受動喫煙は年間60万人以上の若死を引き起こしている。
禁煙を支援するプログラムの普及も必要
禁煙を希望する人に対する支援プログラムを普及させ、禁煙に取り組みやすくする対策を推進することも重要となる。
禁煙により、長期だけでなく即効性のメリットがある。喫煙による病気のリスクが低くなり、健康状態も良くなる。一方で、低タールや低ニコチンたばこにはあきらかな健康へのメリットは認められていないので注意が必要だ。
世界保健機関の発表によると、喫煙がもたらす危険性を理解していないこと人がまだまだ多い。2009年の中国の研究調査では、喫煙が冠性心疾患を引き起こすことを知っていた人は37%で、脳卒中を引き起こすことを知っていた人は17%しかいなかった。
たばこの危険性に気付いている喫煙者の大部分は、禁煙を希望している。禁煙に向けたカウンセリングや薬物療法を受けた人では、禁煙に成功する割合は2倍以上に高まると報告された。医療保険により禁煙を支援する治療を受けられる国は、日本を含む17ヵ国に限られ、人口にすると世界の8.2%にとどまるという。
World No Tobacco Day 2011 celebrates WHO Framework Convention On Tobacco Control(世界保健機関)
Tobacco(世界保健機関)
たばこと健康に関する情報ページ(厚生労働省)