緑茶で生活習慣病予防 静岡・掛川で大規模コホート研究
2011年11月21日 14:24
 東北大学、九州大学、農研機構野菜茶業研究所、静岡県掛川市は2009年から、農林水産省の委託事業として、掛川市民を対象とした大規模な疫学研究「掛川スタディ」を実施している。
緑茶を多く摂取するほど循環器疾患リスクが低下
 静岡県は緑茶の生産量が全国の40%ほどを占める日本一の緑茶産地。特に掛川市など県西部地域では県内でも緑茶生産量が多い。

 この地域は、肥満やメタボリックシンドロームの合併者が少ない地域としても知られる。がん死亡率も低く、平均寿命も全国を上回っている。自治体別の高齢者医療費と平均寿命から長寿獲得コスト(高齢者医療費/平均寿命の対全国比)をみると、掛川市は0.75と低い。

 緑茶(リーフ茶)の飲用が健康に影響を与えているのではないかとみられている。緑茶の動脈硬化の抑制作用のあるとされるカテキンなどの抗酸化物質が含まれる。動物実験では、緑茶の健康機能が確かめられているが、ヒトを対象とした試験結果は少なく、緑茶の効能は科学的には確立されていない。

 そこで、これまで掛川市立総合病院「緑茶医療研究センター」で継続的に行われてきた緑茶研究の知見をいかし、掛川市民を対象に緑茶の生活習慣病予防効果を検証する農水省の委託事業「掛川スタディ」が2009年より開始された。

 掛川スタディは、緑茶の健康機能についてヒトを対象とした科学的根拠を集め、緑茶のどのような品種がもっとも効果があるかを解明し、新食品を開発することを目的に実施される。

 研究は4つのテーマで進められている――

(1)緑茶摂取と生活習慣病に関するコホート研究(東北大学)
 緑茶摂取と動脈硬化の関連因子、およびその後の疾病罹患・死亡との関連を検討する。

(2)緑茶介入試験(掛川市)
 肥満・高コレステロール血症、糖尿病など動脈硬化の危険因子をもつ対象者に緑茶を一定期間飲用してもらい、その抗動脈硬化作用をあきらかにして、メタボリックシンドローム対策に最適な品種選定を行う。

(3)緑茶の形態による吸収への影響解析(農研機構野菜茶業研究所)
 カテキンなどポリフェノール類の吸収様式に及ぼす緑茶の形態の影響を解析し、緑茶新食品の開発につなげる。

(4)緑茶の作用機序の分子生物学的研究(九州大学)
 カテキンを効率よく体内に吸収するには、どのような生活習慣が良いかを研究する。同時にカテキンが体内でどのようなメカニズムで効果を示すのかをあきらかにする。

 30歳以上の掛川市民約1万人が、2009年から19年まで10年でアンケートへの記入や採尿、採血、その後の追跡調査に協力する。「緑茶は基幹産品。多数の住民が自らの体で緑茶の効果を示すという高い動機で参加している」としている。

 鮫島庸一・掛川市立総合病院副院長が研究担当者として推進している緑茶介入試験では、緑茶粉末とブラセボを用いた12週間の二重盲検介入試験を行い、カテキンやテアニンなどの緑茶成分と、2型糖尿病などとも関連の深い血中アディポネクチン、血糖、HDLコレステロール、LDLコレステロールなどへの影響を調査する。

 これまでに発表された大規模前向きコホート研究では、緑茶を多く摂取するほど循環器疾患の死亡リスクが有意に低下することが確かめられた。循環器疾患の中では脳血管障害で特にリスクの低下がみられ、脳血管障害の中では脳梗塞でリスクの低下が顕著だった。

 このほか緑茶をいれる温度や時間、緑茶の粒度、飲み方、同時に摂取する成分などで、緑茶に含まれるカテキンの身体への吸収の違いなどを調べる調査なども行っている。

 掛川市では研究について「日本の緑茶に多大な付加価値を与え、新食品を開発すれば、世界をマーケットにした茶業振興が期待でき、世界の人々の健康向上に貢献することができる」と述べている。

掛川スタディ
Green Tea Consumption and Mortality Due to Cardiovascular Disease, Cancer, and All Causes in Japan
JAMA. 2006;296(10):1255-1265

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