夏の異常気象 気温が1度上昇すると死亡リスクが増加 米研究
2012年5月 8日 14:25
 異常気象による夏の高温化は、慢性疾患をもつ高齢者にとって大きな負担になる。米国では記録的な温暖化が続き、今年の3〜4月には多くの地域で過去最高を記録した。日本でも今年の夏は猛暑が予想されている。
気温が1度上昇すると死亡率が2.8〜4.0%上昇
 糖尿病や心筋梗塞など慢性疾患のある患者にとって、夏の高温は大きな影響をもたらすという研究が発表された。気温が1度上昇しただけでも、高齢者の平均寿命を短くし、年間に数千人もの死亡を引き起こすおそれがあるという。

 これまでに熱波の短期の影響を調べた研究は発表されているが、今回の研究は気候変動が平均寿命にもたらす長期的な影響を検討したものだ。米国科学アカデミーが発行する科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に4月9日付けで発表された。

 「異常気象による高温化が健康にもたらす影響はよく分かっていなかったが、今回の研究で夏温度中の日差変動が熱波と関係なく平均寿命を短くすることがあきらかになった」とハーバード大学公衆衛生大学院のAntonella Zanobetti氏(環境医療)は話す。

 近年、各地で異常気象が観測されており、世界的に気温は上昇している。特に米国の中部大西洋地域、フランス、スペイン、イタリアのような中緯度の地域で夏期の異常な高温化が報告されている。こうした不安定な気候変動は、医療や健康においても深刻な結果をもたらすおそれがあるという。

 熱波による短期の高温化により熱中症が増えることはかねてより知られていることだが、研究者らは「異常気象が長期化すると、気温の上昇が小さな温度差にとどまったとしても、糖尿病、心不全、慢性肺疾患、心臓発作の既往のある高齢患者で、死亡率が上昇する可能性がある」と指摘する。

高齢者の暑さ対策が緊急の課題に
 研究チームは、米国の公的医療保険制度であるメディケアに加入している、135都市に在住する65歳以上の男女370万人の慢性疾患に関する1985〜2006年の長期データを解析した。夏の高温化や冬の温度変化、オゾンレベルといった比較が可能な環境因子についても調査した。

 その結果、夏に高温化し温度変化が大きくなると、各都市で死亡率が上昇する傾向があることが分かった。夏の気候に異変があらわれ温度が1度上昇すると、高齢者では慢性疾患による死亡率が2.8〜4.0%上昇するという。死亡の危険率は、糖尿病をもっている人では4.0%、心臓発作の既往歴のある人では3.8%、慢性肺疾患のある人では3.7%、心不全のある人では2.8%、それぞれ上昇した。

 米国で夏に異常な温度上昇が起きた場合、死亡数は年間1万人以上も増加する計算になるという。一方で、緑地を備えもった都市では、死亡リスクは1〜2%低いことも分かった。熱さ対策が重要であることを裏付ける結果になった。

 夏の高温化の影響は、特に高齢者や慢性疾患のをもつ患者で、高温化への適応が難しいために深刻だ。「体には環境に適応する能力が備わっている。平均気温が高いと、それに合わせて体の体温を調整する機能が働く。そのため、平均気温の高い都市で死亡率がより上昇するという結果にはならない。例えば、ミネアポリスでよりも気温の高いマイアミでは死亡率は高くならない」とJoel Schwartz氏(環境疫学)は話す。

 「しかし、異常気象で気候が急激な変動し、気温が急激に上昇した場合は、体は変化に追いついていけなくなる。糖尿病などの慢性疾患をもつ人では、特にその傾向が強い。高齢者と糖尿病の人口は急増している。気候と慢性疾患に関連は、今後は大きな問題になる可能性がある」と指摘している。

 この研究は、米国環境保護局と国立環境健康科学研究所による資金提供を受けて行われた。

Summer Temperature Variability May Increase Mortality Risk for Elderly with Chronic Disease(ハーバード大学公衆衛生大学院 2012年4月9日)
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