肥満パラドックス 太っていたほうが長生き
2012年8月13日 12:50
 肥満は循環器疾患の危険因子とされている。しかし近年、心不全や動脈硬化症において、肥満患者の予後が良いという報告が欧米を中心に増えており、「肥満パラドックス」として議論を呼んでいる。

 この「肥満パラドックス」は糖尿病の人にあてはまる。標準体重の人よりも過体重や肥満と判定された人の方が長生きする傾向があるという研究が、最近米国で発表された。腎臓病、心不全、高血圧の患者でも同様の傾向がみられるという。

 多くの医師は、なぜ太った患者のほうがやせた患者よりも長生きする傾向があるのかを解明するために、長い間頭を悩ましてきた。「標準体重であれば健康的な状態にある」という通説をくつがえされると、減量治療を行う意味がなくなってしまうからだ。

 体脂肪の蓄積は、インスリンの効き方が悪くなるインスリン抵抗性を引き起こし、血糖コントロールの悪化につながる。そのため、過体重の糖尿病患者は、減量をするようにアドバイスされることが多い。

 米国医師会雑誌に発表された研究では、研究者は心臓病に関する5件研究のデータをメタ解析した。対象となったのは糖尿病と診断された40歳以上の男女2,625人。診断時に体格指数(BMI)にもとづく判定を行った。BMIが18.5〜24.9であると標準体重、BMIが25以上であると過体重・肥満とした。計293人(11.2%)が標準体重とされた。

 結果として、標準体重の年間死亡率は1万人当たり284.8人だったのに対し、過体重・肥満では1万人当たり152.1人だった。喫煙や高コレステロール、腹囲周囲径、高血圧などの危険因子の影響を調整した後でも、死亡率は標準体重の人では、過体重や肥満の人の2倍近くに上昇していた。

 「肥満と2型糖尿病は密接な関連がある。こうした結果は予想していなかった」とノースウェスタン大学のMercedes R. Carnethon氏(予防医学)は首をひねる。

 「米国の糖尿病人口のうち、5〜15%は標準体重だ。特にアジア系の人では白人に比べ肥満は少ない。だが、やせていても糖尿病を発症する危険性は高いといえる」とCarnethon氏は指摘する。

 原因として「肥満の質に問題がかくされている可能性がある」と指摘している。「筋肉と脂肪の比率は、糖尿病の発症や進展において、重要な意味をもつ。筋肉の量は、血糖コントロールに大きく影響する。毎日の生活で活発に動き、インスリンを使い、炭水化物とカロリーを燃焼するために筋肉が必要だ」とCarnethon氏は説明する。

 年齢が高くなると、筋肉量や骨量は自然に減っていく。研究では、標準体重の糖尿病患者は、筋肉が少ないのに対し、脂肪が多くたまっている傾向が示された。米国では「TOFI」という菓子がポピュラーだが、一見するとほっそりとしているが、内側に脂肪がつまっている状態が似ているという。

 骨や筋肉を丈夫に保つためには、適切な栄養を摂り、毎日体を動かして筋肉をつくることが大切となる。「米国では肥満が多いので、肥満の治療に目が向きがちだか、臨床医はやせている2型糖尿病患者を診療するときに、筋肉と脂肪の比率や脂肪の質にも目を向けるべきだろう」と指摘している。

Thinner Diabetics Face Higher Death Rate(ノースウェスタン大学 2012年8月7日)

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