うつ病学会の治療ガイドライン 薬偏重から方向転換
2012年9月12日 18:45
 日本うつ病学会は7月に、多様化するうつ病を適切に治療するための医師向けガイドラインをまとめた。次々に開発されている抗うつ薬の有効性や副作用に関する情報を盛り込んだのが特徴。軽症の治療では薬を優先せず、カウンセリングを中心とした「支持的精神療法」や「心理教育」もしっかり行い、回復に導くことを基本としている。
うつ病の患者数は増えている
 うつ病や気分障害の患者数は、すべてのライフステージにわたって増加しているという。厚生労働省の推計では100万人を超えている。特に就業世代では、長引く不況や経済状況の悪化、失業率の上昇などを背景に、うつ病を惹起する社会・心理的要因が増加している。近年大きな社会問題となっている自殺者数の増加とも関連があると指摘されている。

 うつ病は60〜70歳代でも多い。この世代のうつ病は、「退職などにより人と会う機会が減る」「我慢強い人が多い」「他の病気と思ってしまう」「もの忘れなども年齢によるものと思ってしまう」などの理由から、治療が遅れる傾向がある。うつ病の多くは喪失体験などのストレスとなる出来事がきっかけとなって症状があらわれる。団塊世代に共通する喪失体験として「健康の喪失」、退職による「社会的役割の喪失」、配偶者の死など「大切な人の喪失」などがあげられる。

 うつ病の増加の背景として、うつ病についての啓発活動によりうつ病を疑って受診する人の数が増えたことも挙げられる。「うつ病」や「精神科」に対する患者本人や家族、周囲の人々の敷居も低くなり、比較的気軽に受診しようとする人が増えているという。

 結果として、比較的「軽症」のうつ病の人や、多様な病型の人が受診に至る割合が増えた。また、職域や地域、プライマリケア医などから、うつ病の早期発見から早期治療を求める動きがさかんになってきたことも影響している。

患者にきめ細かく対応することが治療の基本
 うつ病の治療の基本は薬物療法と休養・休職だが、うつ病の患者数の増加を抑止していくためには、現状の把握や分析にもとづく対策が必要となる。そこで、日本うつ病学会は、最新の医学的知見を盛り込み、現在の医療体制や現場の実情を考慮したガイドラインが必要と判断した。治療ガイドラインは「日本うつ病学会治療ガイドライン2・大うつ病性障害」(全61ページ)として同学会ホームページで公表されている。

 ガイドラインでは、急増している患者の多くは軽症か、うつ病の診断基準以下の「抑うつ状態」と推測されると指摘。軽症者に抗うつ薬の使用については、「大量処方や漫然とした処方は避けるべきだ」として、臨床現場では「慎重な判断が求められる」とした。

 薬物療法は「過去に抗うつ薬に良好な反応が得られたこと、罹病期間が長期であること、睡眠や食欲の障害が重い、焦燥がある、維持療法が予測される場合」と規定した上で、焦燥感や不安感の増大などの副作用に注意して、少量から始めることを原則とした。

 軽症うつ病の治療の基本は、患者の話をよく聞き、理解を示しながら回復に導く支持的精神療法であり、その前提として、患者との信頼関係の構築が欠かせないと強調した。

 推奨されるのは「個々の患者さんの所見やニーズにそって、個別のきめ細かい対応をしていくこと」として、「医師がさまざまな視点から治療選択肢を検討して患者への提示を行い、その上で患者の希望や、費用や治療へのアクセスなどの実現可能性を考慮した上で決定していく」としている。

 中等症・重症では、SSRIなどの抗うつ薬とベンゾジアゼピン系の抗不安薬が使われることが多いが、抗うつ薬を1種類使うことを基本とし、「合理的な理由のない多剤併用を行わない」とし、漫然とした使用は避けるべきだと警告した。

日本うつ病学会

© 2014 Soshinsha.
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。

「なぜ運動が良いのか」メカニズムを解明 筋肉ホルモンが心臓を保護 2018.10.03
サッカーで糖尿病を予防 サッカーは骨を丈夫にできる最適な運動 2018.10.02
加齢や健康について周囲に話せるシニアは「幸せ度」が高い 意識調査 2018.10.02
乳がんの新たな検査法を開発 マンモグラフィーの欠点を克服 神戸大 2018.10.02
【9/10〜9/16は自殺予防週間】SNS(LINE・チャット)相談できます! 2018.09.13
「ミドリムシ」の成分が血糖値の上昇を抑制 期待できる健康効果 2018.09.13
糖尿病患者さんに向けて「血糖トレンド」啓発キャンペーンを始動 2018.09.06
「コーヒーは健康に良い」は本当か 何杯までなら飲んで良いのか? 2018.08.30
「第4回がん撲滅サミット」を11月18日(日)に東京ビッグサイトで開催 2018.08.30
介護予防に効果がある「百歳体操」の動画 大阪市が吉本興業と共同制作 2018.08.30
簡単な体力テストで糖尿病リスクが判明 握力やバランス感覚が重要 2018.08.24
「社会的な孤立」「閉じこもり」は危険 高齢者の死亡リスクが2倍超に 2018.08.07
「介護離職」が年間に9.9万人 働きながら介護は346万人 「介護離職ゼロ」の目標遠く 2018.08.07
世界の8.5億人が「腎臓病」 腎臓病の恐ろしさを知らない人が大半 2018.07.20
【健やか21】避難所生活で健康に過ごすための注意点(厚労省) 2018.07.20
「入浴」に健康増進のプラス効果 週5回以上の入浴が心血管を保護 2018.07.20
【健やか21】平成30年度 家族や地域の大切さに関する作品コンクール 2018.07.17
「熱中症」と「エコノミークラス症候群」を予防する方法 被災地で緊急課題に 2018.07.17
子育て中の親のスマホ依存が子どもに悪影響 スマホを置いて対話を 2018.07.17
「超加工食品」がメタボ・糖尿病・がんのリスクを高める 保健指導にも影響 2018.06.28
作りおきに「食中毒」リスク 冷蔵庫保管でも「においで判断」はNG 2018.06.28
「笑い」が糖尿病やメタボ、がんを改善 よく笑うと健康効果を得られる 2018.06.06
「ミドリムシ」からメタボを改善する成分 「痩せるホルモン」を促進 2018.06.06
乳がんと大腸がんを尿検査で早期発見 簡便ながん検査を実用化 2018.05.02
糖尿病の発症前に「慢性腎臓病」(CKD)は悪化 検査で早期発見を 2018.05.02
【連載紹介】何をどう食べるか―体験から得た震災時の食の"知恵袋" 2018.05.02
「プロポリス」が認知機能の低下を抑制 7年間の国際研究で判明 2018.04.27
【健やか21】平成30年度「児童虐待防止推進月間」の標語を募集します! 2018.04.27
夏の夜は「心筋梗塞」の増加に注意 季節の日照時間によって発症に差 2018.04.26
糖尿病リスクは「雨」? 久山町研究の成果で「ひさやま元気予報」 2018.04.19
Copyright ©1998-2013 Soshinsha.
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。
日本臨床内科医会プロジェクト
大人の健康生活ガイド facebook
更新情報配信中!
あなたの年代の“平均余命”
知っていますか??
お住まいの地域の「健康リスク」
“死因別死亡率”
病気別ガイド - 原因・症状・対策 -
あなたの脳は大丈夫?

第11回 読み書き「難読漢字・花偏」

難読漢字の読みに挑戦する問題です。何故そのような漢字になったのか調べてみるのも脳の活性化につながります。(2013/2/20)

 続きはこちら