糖尿病細小血管障害とFMD値が相関。短期加療による改善も評価可能
2012年11月22日 08:58
 早期動脈硬化症の指標として用いられているFMD検査だが、糖尿病細小血管障害のマーカーとしても利用できる可能性が、久留米大学医学部内分泌代謝内科・佐藤秀一氏らの研究で明らかになった。第27回日本糖尿病合併症学会(11月2〜3日・福岡)での発表。細小血管障害の中でも特に腎症とは、ステージの進行とともにFMDが低下するなど、強い相関が確認された。また2週間という短期間の治療介入でもFMDが改善することがわかり、治療指標としての有用性も示された。

 血管内皮機能の低下は、血管障害、特に大血管障害(動脈硬化)の最初期の変化とされている。血管内皮機能を非侵襲で定量的に評価する検査方法として、臨床ではFMD(Flow Mediated Dilation.血流依存性血管拡張反応)が用いられており、FMD値と心血管疾患との関連について、既に多数の報告がある。

 一方、細小血管障害とFMDとの関連についての報告はまだ少ない。また、糖尿病患者のFMDに関する報告も少なく、佐藤氏らはそれらの点を明らかにするとともに、治療介入による血管内皮機能異常の可逆性について検討する狙いで本研究を行った。

糖尿病患者のFMDは有意に低く、男性ではより低値に
 研究の対象は、2009年9月〜2010年2月に同科に入院した2型糖尿病患者のうちeGFR30mL/分/1.73m2未満の腎不全患者を除外した106名(うち男性66名、年齢60.7±11.6歳)。比較検討のため健常者20名(男性10名、年齢32.3±5.7歳)の対照群を置いた。入院時および2週間の治療介入後、いずれも空腹時に、身体計測、血液・尿検査、頸動脈エコー検査、FMD検査を施行した。

 主な患者背景は、BMI24.8±4.4、糖尿病罹病期間10.7±9.1年、HbA1c(NGSP)9.1±2.1%、収縮期血圧126±19mmHg、拡張期血圧73±12mmHg、LDL-C122.3±32.2md/dL、HDL-C49.8±12.6mh/dL、TG145.0±76.2mg/dL、血清クレアチニン0.74±0.26mg/dL、eGFR83.1±27.8mL/分/1.73m2、MeanIMT0.76±0.18mm、FMD5.8±3.1%、喫煙者52%、常習飲酒者32%、ARBまたはACE阻害薬使用者30%、スタチン使用者27%、アスピリン使用者8%など。

 まず、糖尿病患者の入院時と対照の健常者のFMDの比較では、糖尿病群5.8±3.1%、対照群10.5±5.0%で、糖尿病群で明らかに低いことが確認された(p<0.001)。さらに糖尿病患者を性別で2群に分けて比較すると、男性4.9±2.8%、女性7.4±3.1%と、男性ではより低値となることがわかった(p=0.001)。

腎症、網膜症、神経障害など、細小血管合併症の存在とFMDが有意に相関
 続いてFMDに関与する性別以外の因子を探るため、糖尿病群を各患者背景因子ごとに2群に別けてFMDを比較。すると、群間に有意差がみられた背景因子として、腎症の合併(p=0.001)、常習飲酒(p=0.018)、頸動脈プラークあり(p=0.019)、高血圧の併発(p=0.02)、喫煙(p=0.036)、神経障害の合併(p=0.041)、RAS阻害薬の使用(p=0.048)が挙げられた。

 前述のようにFMDには性差がみられることから、それを補正したうえで比較すると、高血圧の併発(p=0.002)、腎症の合併(p=0.003)、神経障害の合併(p=0.019)、頸動脈プラークあり(p=0.022)、脂質異常症の併発(p=0.023)、網膜症の合併(p=0.032)が、それぞれ有意な群間差のある項目として抽出された。このことから、FMDは既に多数報告されている大血管障害との相関だけでなく、糖尿病に特異的な細小血管障害に基づく三大合併症である腎症、網膜症、神経障害のいずれも、その存在と有意な関係があることが確認された。

腎症ステージの進行に従いFMDがより低下する
 三大合併症の中でも腎症の併発はFMDと特に強い相関を示したことから、より細かく腎症の病期で分類しFMDを比較したところ、腎症なしの群では6.5±3.0%、早期腎症群は4.4±2.7%、顕性腎症群は3.7±3.6%で、病期の進行とともにFMDが低下していた()。腎症なし群と早期腎症群、および、腎症なし群と顕性腎症群の群間差は有意だった(ともに p<0.001)。


腎症の病期別にみたFMD値

 次に、臨床パラメータとFMDとの関係をみると、有意な相関がある因子として、糖尿病罹病期間、MeanIMT、eGFR、HDL-Cが挙がり、性差で調整後は糖尿病罹病期間(p=0.01)とeGFR(p=0.017)が有意な因子として残った。
2週間の入院でFMDが改善。早期動脈硬化症の可逆性を示す
 入院時と入院2週間後の各種臨床パラメータの変化をみると、血糖、脂質、血圧、BMIなどがすべて有意に改善し、FMDも6.7±3.9%に有意に改善していた(p=0.0006)。包括的な治療による早期動脈硬化症の可逆性を示す結果と考えられる。


 発表の結語として佐藤氏は、「アルブミン尿やCKDが心血管イベントの発症に強く寄与する事実と考え合わせると、腎症と動脈硬化の双方に血管内皮機能異常が関与している可能性を示した結果と考える。また、血糖はもとより血圧、脂質のコントロールや禁煙など、糖尿病患者に対する早期からの介入は、将来の心血管疾患予防だけでなく、細小血管合併症、特に腎症の予防にもつながる可能性が考えられる」とまとめた。

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