野菜のカロテノイドが乳がんリスクを低下
2012年12月14日 15:50
ニンジンや、サツマイモ、ホウレンソウ、キャベツなど、カラフルな緑黄色野菜にはカロテノイドが多く含まれる。これらの野菜をよく食べる女性では、食べない女性に比べ、乳がんの発症が減るという研究が発表された。
野菜の色素成分はがん予防に効果的
カロテノイドは、野菜や果物に含まれる黄色や赤色の色素成分。活性酸素の発生を抑えたり、取り除く作用がある。カロテノイドには、活性酸素の働きで引き起こす動脈硬化を予防したり、老化やがんの発生に対しても効果があるとみられている。
ハーバード大学医学大学院のヘザー エリアッセン博士らの研究チームは、乳がんと血中カロテノイドの関連について調べた8件のコホート研究のデータを調べた。
3,000人の乳がん患者と、4,000人の健康な女性を対象に食事調査を行い、血液を採取し血中のカロテノイドレベルを比較測定した。その結果、カロテノイドレベルの高い上位20%の女性はカロテノイドレベルの低い女性と比較して、乳がんのリスクが15〜20%も低いことが分かった。
「カロテノイドレベルの高い女性ほど、乳がんの発症が減る傾向がみられました」とエリアッセン博士は話す。
乳がん細胞の多くは、女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けて、分裂・増殖する。つまり、エストロゲンが乳がん細胞の中にあるエストロゲン受容体と結びつき、がん細胞の増殖が促される。このように、エストロゲンを取り込んで増えるタイプの乳がんを「エストロゲン感受性乳がん」という。
血中のカロテノイドレベルの高い女性では、エストロゲン感受性乳がんの発症も減ることが確かめられた。
このタイプのがんのリスク要因としては、閉経後、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がない、飲酒習慣があることなどが挙げられる。リスクを下げるためには、閉経後の女性では、運動を習慣として行う、野菜、果物、イソフラボンを十分にとることが有効と考えられている。
カロテノイドががんの発症するメカニズムについて十分には解明されていないが、カロテノイドを摂取することで、脂溶性ビタミン(レチノール)の代謝が活発になったり、細胞間のコミュニケーションが改善し、がん細胞の成長が抑制されると考えられている。
なお、カロテノイドの含まれるサプリメントの利用に関しては、冷静に判断した方がよいと、研究者は指摘している。「βカロテンのサプリメントを過剰に服用した患者で、肺がんのリスクが上昇したという研究などが報告されています。サプリメントについては多くの調査が必要です」とエリアッセン博士は指摘する。
「野菜を十分にとることは、肥満や心疾患などの予防の観点からも勧められます。女性で、乳がんのリスクが低下することを確かめた意義は大きい」と研究者は強調している。
Women With Higher Carotenoid Levels Have Reduced Risk of Breast Cancer(米国立がん研究所 2012年12月6日)