肝臓内グリコーゲン量を減らすと脂肪は効率的に燃焼 筑波大
2013年8月23日 17:00
 筑波大学の矢作直也准教授らの研究チームは、肝臓内にグリコーゲン量の減少を感知する仕組みがあり、その働きによって、絶食時のエネルギー源を肝臓のグリコーゲンから脂肪細胞の中性脂肪に切り替えていることを発見した。肝臓内グリコーゲン量と脂肪燃焼との関係がはじめて解明され、脂肪をより効率的に燃焼させるためには、肝臓内グリコーゲン量を減らすことが有効であることがあきらかになった。

 この研究は、筑波大学医学医療系の矢作直也准教授、東京大学大学院医学系の泉田欣彦助教らによるもの。詳細は「Nature Communications」に掲載された。

 肥満は、体内の脂肪細胞に中性脂肪が過剰に蓄えられた状態で、肥満のある人は糖尿病や高血圧、脂質異常症などを併発しやすいことが知られている。これらは動脈硬化の危険因子であり、その対策が求められている。

 食事療法が有効な対策となるが、肥満の解消は容易ではない。肥満防止に向けた脂肪の分解・燃料のメカニズムの解明と、脂肪を効率良く燃焼する方法などの開発が求められている。

 研究チームは今回、絶食時に中性脂肪がエネルギー源として分解され使われていくプロセスを研究する過程で、肝臓からの神経シグナルが脂肪組織の中性脂肪の分解において重要な役割を担っていることを発見した。

 肝臓―脳―脂肪組織にまたがる調節メカニズムを解明するために、「迷走神経」肝枝に「外科的切離術(HVx)」を行った。迷走神経は、12対ある脳神経のうちのひとつで、第10脳神経とも呼ばれる。脳幹から出て腹部まで達する、副交感神経の大部分を占める重要な神経だ。

 すると絶食時の脂肪分解が減少し、脂肪組織が相対的に大きくなることが確認された。上行性の神経線維のみを破壊する「カプサイシン処理(Cap)」を施しても、同様の結果が得られることも確認。これにより絶食時の脂肪分解シグナルが迷走神経肝枝を経由していることが示された。

 また、絶食時における迷走神経シグナルの起点を分子生物学的手法により探索したところ、肝臓内グリコーゲン量の減少が引き金となっていることを発見。具体的には、「グリコーゲン合成酵素(Gys2)」を肝臓に過剰に発現させ、肝臓のグリコーゲン量を増やすと、絶食時の脂肪分解が抑制されることを発見した。逆に、RNA干渉(RNAi)によりグリコーゲン合成酵素の発現を低下させグリコーゲン量を減らすと、脂肪分解が促進されることも確認した。

 さらに、グリコーゲン分解を司る「グリコーゲンホスホリラーゼ」と呼ばれる酵素の発現量を低下させ、グリコーゲン分解を抑制したところ、グリコーゲン量が増加すると同時に、絶食シグナルが抑制され、結果として脂肪分解が抑制されることも判明した。

 これらのことから、絶食時の迷走神経シグナルの起点になっているのは、グリコーゲンの分解によって生成される代謝物ではなく、グリコーゲン量そのものの減少であることが示された。研究チームは、「脂肪をより効率的に燃焼させるためには、肝臓内グリコーゲン量を減らすことが有効である」という結果を導き出した。

 なお、研究グループでは今後、肝臓内グリコーゲン量を検知する仕組みについてのさらなる解明を目指した研究を進めるとしており、「食事療法によらない、肥満対策の新たな治療法の開発が期待される」とコメントしている。

肝臓内グリコーゲン量の検知システムを発見〜脂肪燃焼との関係を解明、肥満治療へ一歩前進〜(筑波大学 2013年8月13日)

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