長野県、長寿日本一の秘密は「健康への高い関心」と「社会参加」
2014年6月19日 15:56
長野県は、厚生労働省の調査によると、平均寿命が男性は80.88歳、女性は87.18歳で、男女ともに全国1位となっている(2010年調査)。同県の男性では、1990年からずっと平均寿命の全国1位を重ねている。
なぜ長野は長寿県になれたのか? 県は医師や大学教授ら7人をメンバーに研究チーム(座長:佐々木隆一郎・飯田保健福祉事務所長)を立ち上げ、このほど中間報告を発表した。そこから、信州人の健康長寿の要因がみえてきた。背景にあるのは、「健康に対する関心が高い」ことや、「就業意欲が高くボランティア活動にも積極的で、暮らしに生きがいをもっている」ことだ。
生きがいをもって生活 研究チームが中間報告
研究チームがまとめた長野県の健康長寿の要因は次の通り――
・ 「高齢者の就業率が全国トップで、ボランティア活動にも積極的。生きがいをもって生活している」。
・ 「男女とも野菜摂取量が全国1位。郷土料理・伝統料理を活用している」。
・ 「保健師、食生活改善推進員、保健補導員ら健康ボランティアの活動が盛ん」。
・ 「医師、歯科医師、薬剤師、保健師、管理栄養士などの専門職による地域保健医療活動が活発」。
分析した81の指標のうち、就業率の高さや肥満者の割合、野菜の摂取量など31の指標で上位になった都道府県が、平均寿命や健康寿命(介護が必要なく自立して生活できる期間)も上位になる傾向があることが判明した。
長野県では、男性の高齢者の就業率が高い。就業率は男性が74.2%で5位、女性が53.0%で4位だが、65歳以上に限ると、男性が41.5%で1位(いずれも2007年)だった。研究チームは就業率の高さが、長寿につながっていると推測している。
就業率のほか、女性が1位となった野菜摂取量(1日平均352グラム、2006〜10年平均)や、2位の保健師数(人口10万人あたり61.9人、2010年)など9つの指標で関連が高いと推定している。
研究チームは、厚労省が統計をとりはじめた1920年代までさかのぼって統計資料を分析。その結果、1921年以降も、県の平均寿命は上位で推移していることが分かった。結核死亡率と乳児死亡率が低く、保健水準の相対レベルが高かったことが示された。
大正末期から昭和初期にかけての長野県の食生活をみると、「魚、みそなどの大豆食品、野菜、イナゴなどの昆虫食といったさまざまな食材からタンパク質をとっていた。みそ、しょうゆ、豆腐、凍り豆腐などの大豆製品も自宅で作っていた」という。
高度経済成長期には県の平均寿命はいったん低下した。原因のひとつは脳血管疾患の死亡率の高さだった。そこで県は1945年に「保健補導員活動」を開始。当時の保健師が昼夜なく働く姿を見た主婦たちが、少しでもお手伝いしようと自主的に活動をはじめた。
昭和30〜40年代には脳卒中に対策しようと、保健師や保健補導員によって食事の塩分濃度測定や冬期室温測定、一部屋温室運動などの活動が展開された。
健康増進に向けて社会参加 食のボランティア活動が全県に拡大
1967年には、保健所の栄養教室の修了者の中から「長野県食生活改善推進協議会」が組織された。食生活改善推進員は、家族の健康管理から、近隣、地域住民へと食生活改善を中心に健康づくりのための実践活動の輪を広げ、食からのボランティア活動を行った。減塩などの地域ぐるみの食生活改善運動が長寿につながった。
男性の習慣喫煙率も全国で44位(2006年〜10年)と際立って低い。禁煙運動が高度成長期の初期から伊那市で始まり、全県に広がったことなども健康長寿に影響している。
研究チームは「高い学校教育の普及率がもたらす、栄養に対しての知識や工夫が寄与した。積極的な社会活動参加により生きがいを持って暮らしている」との推論をまとめた。
県健康福祉政策課は「長野がなぜ健康長寿県になれたのか、その要因をあらためて確認できた。高齢化の進展によって、地域における共助の取組などのソーシャルキャピタルを強化することが今後の課題となる」と説明。
研究チームは今後、健康づくりへの取り組み状況などを地域ごとに調べ、本年度中に最終報告書をまとめる。
長野県は日本一の長寿県 研究チームによる統計分析
長野県 健康長寿プロジェクト・研究事業(2014年5月2日)