ストレスの多い仕事は脳卒中リスクを上昇 効果的な介入必要
2015年11月 6日 13:39
ストレスの多い職業に従事している人は脳卒中を発症リスクが高いという調査結果が発表された。特に、要求は厳しいが裁量権が少ない高ストレスの職業に就くと、脳卒中リスクが高まる可能性があるという。
高ストレスの仕事に就いている女性は脳卒中の発症リスクが高い
中国の南方医科大学のユリ ヒュアン氏らは6件の研究を解析し、職業と脳卒中の関連について調べた。研究は米国神経学会が発行する医学誌「Neurology」に発表された。
研究チームは、18~75歳の約14万人の男女を対象に、3~17年間追跡して調査した。解析した研究の1件は米国、3件はスウェーデン、1件は日本、1件はフィンランドで行われたものだ。
その結果、ストレスの多い仕事に就いている人は、そうでない人に比べ、脳卒中を発症するリスクが22%高いことが判明した。
特に「虚血性脳卒中」に関しては、ストレスの多い仕事に就いている人は、そうでない人に比べ、発症リスクが58%上昇していた。虚血性脳卒中は、脳内の血管が血栓などによって塞がれることによって起こる局所的な脳梗塞だ。
脳卒中のリスクを性別にみたところ、女性ではストレスの多い仕事に就いている場合、脳卒中のリスクが33%上昇することが明らかになった。
「ストレスの多い仕事に就いている人は、特に女性で脳卒中の発症リスクが大きく上昇することが明らかになりました」と、ヒュアン氏は言う。
仕事のストレスの多い人は、体格指数(BMI)が上昇し、血糖値、コレステロール値が高い傾向があるという。これらは、心血管疾患の危険因子だ。
「仕事のストレスが、喫煙、運動不足、品質の低い食習慣、必要な助けを得られないなど、不健康な行動スタイルを促している可能性があります」と、ヒュアン氏は指摘する。
要求度が高く裁量度の低い高ストレスの仕事で発症リスクは58%上昇
研究チームは、時間的制約、精神的な要求度などを考慮し、仕事の要求・心理的負担と裁量によって4項目に分類し解析した。
4項目は、要求度と裁量度がともに低い受動的な仕事(肉体労働者、用務員など)、要求度が低く裁量度は高い仕事(科学者、建築家など)、要求度が高く裁量度は低い仕事(看護師、介護士、サービス業従事者など)、要求度と裁量度がともに高い仕事(医師、教師、エンジニアなど)だった。
その結果、要求度が高く裁量度は低い高ストレスの仕事では、脳梗塞の発症リスクが低ストレスの仕事よりも58%高かった。受動的または能動的な低ストレスの仕事では、リスク上昇はみられなかった。
「解析した研究は脳卒中リスクについて十分に解明したものではありませんが、高ストレスの仕事と脳卒中の発症リスクには関連があるのは明らかです」と、ヒュアン氏は言う。
「ストレスの多い仕事に就いている労働者に対して、効果的な生活習慣改善を指導するとともに、仕事の裁量と自由度を増やすよう調整し、ストレスレベルを下げる介入が必要となるでしょう」と指摘している。
Can Work Stress Be Linked to Stroke?(米国神経学会 2015年10月14日)
Association between job strain and risk of incident stroke(Neurology 2015年10月14日)