旅行をすれば認知症を予防できる? 高齢者の「主観的幸福感」を向上
2016年7月18日 09:02
 東北大学加齢医学研究所(所長:川島隆太教授)とクラブツーリズムは、旅行が脳にもたらす健康作用を調べる共同研究を7月より開始すると発表した。
旅行に行く人は人生を肯定的に捉えている
 計画されている研究は、脳科学分野の先進的な研究で世界的に知られる研究機関である同研究所が進めている「生涯健康脳」の研究において、シニア世代に強みをもつクラブツーリズムが産学連携を組み、医学的見地から「旅行」と「認知症予防・抑制」の関係について本格的に調査するもの。

 3年間で約90名を対象に調査し、「旅行に行く頻度の高い高齢者は主観的幸福感やストレスコーピング(対処)能力が高く、認知機能が保たれている。また、旅行前・旅行後で脳に変化があり、主観的幸福感は向上、認知機能は低下抑制がみられる」という予測を実証する。

 プレ調査として、研究グループは5月に45人を対象に、旅行に行く頻度と個人の主観的幸福感の関連を調べる調査を実施した。

 過去5年間の旅行回数について、自由記述形式で質問。また、心理学的に信頼性が確認された質問紙である「主観的幸福感尺度」にも回答してもらい、客の主観的幸福感を測定した。

 その結果、旅行に行く頻度の高い人ほど、自身の人生を肯定的に捉えている傾向があることが示された。
「旅行先の文化や歴史を知りたい」という気持ちが自信を強める
 研究グループが旅行回数と主観的幸福感の関係性を調べる統計解析を行ったところ、「過去5年間の旅行回数が多いほど、人生に対する"失望感"が低い」という結果が得られた。

 「人生に対する失望感」は、主観的幸福感尺度を測定するための因子のひとつで、「自分の人生は退屈だとか面白くないと感じていますか」「将来のことが心配ですか」「自分の人生には意味がないと感じていますか」という3つの質問に対する回答をスコア化し測定する。

 また、「旅先で出会う人々と交流したい」という動機を持って旅行をされる人ほど、「人生が面白い」「今の生活は過去よりも幸せ」といった、人生に対するポジティブな気持ちや満足感を高くもっていることが分かった。

 「旅行先の文化や歴史を知りたい」といった、文化の見聞を旅行の動機とする傾向の高い人ほど、「人生で起こる困難な状況に自分で対処できる」という自信を強くもっている傾向があるという。
旅行が認知症の予防・抑制に効果的
 これらの結果は、あくまで旅行回数や観光動機と主観的幸福感の「関連」を示す結果であり、旅行回数や観光動機が主観的幸福感に「影響」することを示すものではないが、頻繁に旅行に行くほど、あるいは明確な動機を持って旅行に行きその動機が満たされるほど、主観的幸福感が高くなる可能性が示唆される結果となった。

 高い主観的幸福感は、長寿命や認知機能の維持に影響すると考えられており、「旅行が認知症の予防・抑制に効果的」ではないかと研究グループは考えている。

 今後の研究で「旅行に行く頻度の高い高齢者は主観的幸福感やストレスコーピング(対処)能力が高く、脳萎縮の抑制、認知機能の維持に影響すること」を脳科学的に示し、「旅行の頻度および経験が、脳のどの領域の構造に関連し、どのような認知機能のレベルの維持に関連するか」を明らかにしていくという。

東北大学加齢医学研究所
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