日本食に認知症を予防する効果 認知症を予防する食事スタイルが判明
2016年7月27日 10:08
 認知症の発症に食事スタイルが多く関わっていることが、最近の研究で明らかになっている。米国では認知症予防の効果のある「マインド ダイエット」と呼ばれる新しい食事スタイルが開発されている。日本でも東北大学の研究により、日本食に認知症予防の効果があることが判明した。
認知症を予防するために効果的な食事スタイル
 「マインド ダイエット」と呼ばれる新しい食事スタイルが、アルツハイマー病などの認知症を予防するのに効果的であることが、米国のラッシュ大学医療センターの研究で明らかになった。

 認知症を予防するために効果的な食事スタイルについてはこれまでも研究が行われているが、ラッシュ大学医療センターが行った研究によると、「マインド ダイエット」と呼ばれる食事スタイルは、ほどほどに守っていても効果を得られる点が従来の食事スタイルと異なり画期的だという。

 認知症を予防するための食事スタイルは、糖尿病や肥満を予防・改善するための食事療法と共通する部分が多い。糖尿病や高血圧、肥満などを改善することが、認知症の予防にも役立ちそうだ。
アルツハイマー病の発症リスクが50%以上低下
 医学誌「アルツハイマー病と認知症」に発表された研究で、「マインド ダイエット」を実行した人では、アルツハイマー病の発症リスクが5割以上減少することが明らかになった。ほどほどに実行した人でも発症リスクを4割近く減少した。

 この研究は、1997年に開始された大規模研究「ラッシュ記憶加齢プロジェクト」の参加者923人を対象に行ったもの。研究チームは2004?2013年に、参加者の食事内容を調べ、認知症の発症を追跡して調査した。

 期間中に144人がアルツハイマー病を発症したが、「マインド ダイエット」を実行した人では、発症リスクが53%低下した。ほどほどに実行した人でも、発症リスクが35%低下した。

 なお、健康的な食事スタイルとして知られる「地中海式ダイエット」と「DASHダイエット」でも、アルツハイマー病はそれぞれ54%と39%低下したが、ほどほどに実行した人では予防効果はほとんど得られなかった。
「地中海式ダイエット」と「DASHダイエット」のハイブリッド
 アルツハイマー病は、「アミロイドβ」という毒性の高いタンパク質が脳に蓄積し、神経細胞が障害を受け、神経細胞が死んでいくことで引き起こされると考えられている。生活スタイルや環境、遺伝的な要因などが発症に関与するが、食習慣も重要な要因となる。

 「マインド ダイエット」は、米ラッシュ大学の栄養疫学部が開発した食事スタイルで、健康的な食事として知られる「地中海式ダイエット」と「DASHダイエット」の長所を組み合せたものだ。

 「地中海式ダイエット」は、野菜・果物・豆類などの植物性食品と、地中海地域の特産のオリーブオイル、新鮮な魚介類などを組み合わせた食事スタイルで、肥満やメタボの予防効果があることが知られる。一方、「DASHダイエット」は高血圧の予防・改善のために開発された食事スタイルで、玄米や全粒パンなどの全粒穀物や、低脂肪の肉や乳製品、ナッツや豆類などを積極的にとることが勧められている。

 2つの食事法のハイブリッドである「マインド ダイエット」は、「地中海食とDASH食による神経変性を遅延させるための介入」(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)の頭文字をとって「マインド」(MIND)と名付けられた。
10種類の良い食品と5種類の悪い食品
 「マインド ダイエット」の方法はシンプルで、10種類の健康に良い食品を積極的にとり、5種類の健康に悪い食品をなるべく避けるというものだ。

 積極的にとりたい10種類の食品とは――
・ 葉菜類(キャベツ・ホウレンソウ・レタス・ケール・コマツナ・ハクサイなど)
・ 根菜類(ニンジン・トマト・ブロッコリー・カブ・ゴボウなど)
・ 豆類(大豆・インゲン・グリーンピースなど)
・ 全粒穀物(小麦の全粒粉や玄米など)
・ 不飽和脂肪酸の多い植物オイル(オリーブオイルなど)
・ 魚(マグロ、カツオ、サーモン、サバなど)
・ チキン(脂肪の多い皮の部分を取り除く)
・ ナッツ類(クルミ・アーモンド・ピスタチオなど)
・ ベリー
・ ワイン

 このうち、ベリーは果物なかで唯一取り上げられており、「アントシアニン」や「ビタミンC」などが豊富に含まれ、動脈硬化・がん・老化・免疫機能の低下などを引き起こす活性酸素を抑える抗酸化作用があるとされている。

 また、赤ワインに含まれるポリフェノールである「レスベラトロール」にも抗酸化作用がある。飲み過ぎには注意が必要だが、1日1杯を飲むと心筋梗塞や認知症などの予防効果を得られることが、過去の研究で確かめられている。

 反対になるべく控えた方が良い5種類の食品は次の通り――
・ 赤身肉
・ バター・マーガリン
・ チーズ
・ ペイストリーやケーキ、お菓子
・ 油で揚げた食品、ファストフード

 脂身の多い肉やバター・チーズなどの乳製品など、動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は、動脈硬化を進展させ脳の健康にも悪いので、なりべく控えた方が良い。

 今回の研究は介入試験ではないので、「マインド ダイエット」の効果については今後の研究で確かめる必要があるが、研究者は糖尿病、高血圧、肥満などの改善にも役立つ食事スタイルとみている。

日本食で認知症を予防 認知症が20%減少
 日本食を多く摂っている人では認知症の発症が少ないことが、日本人を対象とした前向きコホート研究で明らかになっている。この研究は、東北大学社会医学講座公衆衛生学分野の遠又靖丈氏によるもので、医学誌「journals of gerontology」オンライン版に発表された。

 「大崎コホート研究」は、宮城県大崎保健所管内1市13町に居住する40~79歳の国民健康保険加入者を対象とした、1994年に開始されたコホート研究。東北大学が生活習慣に関する調査と、死亡やがんなどの罹患の状況に加えて、医療費を追跡して調査している。

 研究チームは、大崎コホート研究に参加した65歳以上の高齢者1万4,402人を5.7年間追跡して調査した。期間中に9.0%が認知症を発症した。

 研究チームは、食物の摂取頻度について39項目の質問をして、食事を「日本食」「動物性食品」「高乳製品」の3つのパターンに分けた。日本食パターンは、魚・野菜・海草・漬物・大豆製品・きのこ・いも・果物などを多く摂取しており、動物性食品パターンは肉類を多く摂取していた。それぞれの食事パターンを点数化し、4分位によって4グループに分け、認知症発生との関連を調べた。

 その結果、日本食パターンの度合いが高い高齢者では認知症発生リスクが20%低下していた。一方、動物性食品パターンと高乳製品パターンでは、認知症発生との有意な関連がみられなかった。

 日本食パターンの内容は、先に挙げた「マインド ダイエット」と共通するものが多い。日本食は、高血圧、糖尿病、脂質異常症の予防・改善にも効果があることが確かめられている。どんな食事をすると認知症を予防できる可能性があるか、今後の研究に期待がかかる。

New Mind Diet May Significantly Protect Against Alzheimer's Disease(ラッシュ大学 2015年3月16日)
東北大学社会医学講座公衆衛生学分野
Dietary Patterns and Incident Dementia in Elderly Japanese: The Ohsaki Cohort 2006 Study(journals of gerontology 2016年6月29日)
© 2014 Soshinsha.
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。

「なぜ運動が良いのか」メカニズムを解明 筋肉ホルモンが心臓を保護 2018.10.03
サッカーで糖尿病を予防 サッカーは骨を丈夫にできる最適な運動 2018.10.02
加齢や健康について周囲に話せるシニアは「幸せ度」が高い 意識調査 2018.10.02
乳がんの新たな検査法を開発 マンモグラフィーの欠点を克服 神戸大 2018.10.02
【9/10〜9/16は自殺予防週間】SNS(LINE・チャット)相談できます! 2018.09.13
「ミドリムシ」の成分が血糖値の上昇を抑制 期待できる健康効果 2018.09.13
糖尿病患者さんに向けて「血糖トレンド」啓発キャンペーンを始動 2018.09.06
「コーヒーは健康に良い」は本当か 何杯までなら飲んで良いのか? 2018.08.30
「第4回がん撲滅サミット」を11月18日(日)に東京ビッグサイトで開催 2018.08.30
介護予防に効果がある「百歳体操」の動画 大阪市が吉本興業と共同制作 2018.08.30
簡単な体力テストで糖尿病リスクが判明 握力やバランス感覚が重要 2018.08.24
「社会的な孤立」「閉じこもり」は危険 高齢者の死亡リスクが2倍超に 2018.08.07
「介護離職」が年間に9.9万人 働きながら介護は346万人 「介護離職ゼロ」の目標遠く 2018.08.07
世界の8.5億人が「腎臓病」 腎臓病の恐ろしさを知らない人が大半 2018.07.20
【健やか21】避難所生活で健康に過ごすための注意点(厚労省) 2018.07.20
「入浴」に健康増進のプラス効果 週5回以上の入浴が心血管を保護 2018.07.20
【健やか21】平成30年度 家族や地域の大切さに関する作品コンクール 2018.07.17
「熱中症」と「エコノミークラス症候群」を予防する方法 被災地で緊急課題に 2018.07.17
子育て中の親のスマホ依存が子どもに悪影響 スマホを置いて対話を 2018.07.17
「超加工食品」がメタボ・糖尿病・がんのリスクを高める 保健指導にも影響 2018.06.28
作りおきに「食中毒」リスク 冷蔵庫保管でも「においで判断」はNG 2018.06.28
「笑い」が糖尿病やメタボ、がんを改善 よく笑うと健康効果を得られる 2018.06.06
「ミドリムシ」からメタボを改善する成分 「痩せるホルモン」を促進 2018.06.06
乳がんと大腸がんを尿検査で早期発見 簡便ながん検査を実用化 2018.05.02
糖尿病の発症前に「慢性腎臓病」(CKD)は悪化 検査で早期発見を 2018.05.02
【連載紹介】何をどう食べるか―体験から得た震災時の食の"知恵袋" 2018.05.02
「プロポリス」が認知機能の低下を抑制 7年間の国際研究で判明 2018.04.27
【健やか21】平成30年度「児童虐待防止推進月間」の標語を募集します! 2018.04.27
夏の夜は「心筋梗塞」の増加に注意 季節の日照時間によって発症に差 2018.04.26
糖尿病リスクは「雨」? 久山町研究の成果で「ひさやま元気予報」 2018.04.19
Copyright ©1998-2013 Soshinsha.
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。
日本臨床内科医会プロジェクト
大人の健康生活ガイド facebook
更新情報配信中!
あなたの年代の“平均余命”
知っていますか??
お住まいの地域の「健康リスク」
“死因別死亡率”
病気別ガイド - 原因・症状・対策 -
あなたの脳は大丈夫?

第11回 読み書き「難読漢字・花偏」

難読漢字の読みに挑戦する問題です。何故そのような漢字になったのか調べてみるのも脳の活性化につながります。(2013/2/20)

 続きはこちら