厚生労働省が「過労死等防止対策白書」を初めて作成
2016年10月19日 12:57
 厚生労働省はこのほど、平成28年版「過労死等防止対策白書」を公表した。同白書が作成されるのは初めてのことで、「過労死等が多い」と指摘されている業種の残業時間や、疲労の蓄積度、ストレスの状況などを重点的に調査している。

 2014年に成立した「過労死等防止対策推進法」では過労死を取り巻く現状や対策について年次報告をまとめることを義務付けている。白書ではまず、就業時間や年次有給休暇取得率、メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所の割合など、労働者を取り巻く現状について掲載。続いて、「労働・社会面からみた過労死等の状況」として、さまざまな角度から調査を行っている。

運輸業や情報通信業で残業時間が多い傾向にある
 例えば平均的な月における正規雇用従業員(フルタイム)1人当たりの月間時間外労働時間(業種別)を調べたところ、「月45時間超」と回答した企業の割合が最も多いのは「運輸業、郵便業」(14.0%)で際立って高い結果となった。「月20時間超」と回答した企業の割合も「運輸業、郵便業」(54.7%)が最も多く、「情報通信業」(53.7%)、「建設業」(48.7%)が続いた。

 一方で、1年間のうち1か月の時間外労働時間が最も長かった正規雇用従業員(フルタイム)の月間時間外労働時間を見ると、「月80時間超え」と回答した企業の割合は全体で22.7%。業種別では「情報通信業」(44.4%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(40.5%)、「運輸業、郵便業」(38.4%)と、いずれも全体の平均を大きく上回っている。

 報告書では所定外労働(残業)が発生する理由についても言及。残業時間の長い「建設業」、「情報通信業」、「運輸業、郵便業」、「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」、「教育、学習支援業」では、「人員が足りないため(仕事量が多いため)」の回答が最も多かった。一方で「学術研究、専門・技術サービス業」では「予定外の仕事が突発的に発生するため」が一番多い回答だったが、「情報通信業」や「卸売業、小売業」、「教育、学習支援業」でも二番目に多い回答だった。

 労働者に労働時間に関する希望を聞いたところ、残業時間が増えるにしたがって「今より減らしたい」との回答が増加することも判明。残業時間が1週間あたり「10時間以上20時間未満」では64.4%、「20時間以上」では76.8%もの人が「今より減らしたい」と答えていた。

残業時間の増加に伴って高くなる疲労とストレス
 最近1か月間の勤務状況や自覚症状から判定した疲労の蓄積度が「高い」または「非常に高い」となった労働者(正社員)の割合を見ると、業種別では「宿泊業、飲食サービス業」が40.3%と最も高く、次いで「教育、学習支援業」38.9%、「運輸業、郵便業」38.0%の順になっている。

 一方、最近数週間のストレスの状況に関する別の調査では、「医療、福祉」、「サービス業(他に分類されないもの)」、「卸売業、小売業」、「宿泊業、飲食サービス業」で、高いストレスがかかっていることが分かった。

 疲労の蓄積度やストレスの状況を平均的な1週間の残業時間別に見ると、残業時間が増えるに従ってその割合は高くなっている。また職場におけるハラスメントについては、「ハラスメントはない」との回答が約7割を占めたが、自分もしくは自分以外にハラスメントがある場合は約半数の労働者で疲労の蓄積度が高い結果も出ている。また疲労の蓄積度、ストレスの状況のいずれも、睡眠時間が短いほど高い割合を示した。

 このような状況から、過去半年間に過労や過剰ストレスによる脳血管疾患や心疾患、精神障害などの発症や悪化の不安を感じたことがあるかを尋ねた質問では、「精神障害(メンタルヘルス不調)の発症・悪化の不安を感じたことがある」が15.3%、「心疾患の発症・悪化の不安を感じたことがある」が6.3%、「脳血管疾患の発症・悪化の不安を感じたことがある」が5.3%だった。

若者への啓発機会も増やしていく
 白書では、第2章と第3章で「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の策定の経緯と概要などを説明。将来的に過労死等ゼロを目指すことや、平成29年までにメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上にすること、また平成32年までに週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にする・年次有給休暇取得率を70%以上にすることなどを目標とし、早期達成を目指すことなどが示された。

 厚生労働省は過労死等の防止のための対策として、ポスターやパンフレットなどで国民に対して広く周知・啓発をはかっていく方針。一方で大学生や高校生などの若者を対象に、賃金や労働時間、休憩・休日に関するルールなど、働くときに知っておくべき労働基準関係法令に関する知識を分かりやすく解説する機会も設けていく。また「労働条件相談ほっとライン」や、メンタルヘルス不調・過重労働による健康障害に関する電話相談窓口「こころほっとライン」など相談窓口も設置するなどして、相談体制の整備も進める。

平成28年版過労死等防止対策白書

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