たばこが遺伝子変異の原因に 「1日1箱1年」で肺に150個のDNA変異
2016.11.16
 喫煙を続けるとDNAが傷つきやすくなり、さまざまな異常を引き起こすことが、国立がん研究センターなどの国際研究チームの調査で明らかになった。
 たばこがDNA(遺伝子)の突然変異を誘発し、特に肺がんでの突然変異数がもっとも多く、1年間毎日1箱のたばこを吸うと、150個の突然変異が肺にできるという。
 5,243症例のがんゲノムデータをもとに、17種類のがんについて調査した。
喫煙ががんの原因に 多くは予防が可能
 喫煙は、さまざまながんの原因の中で、予防可能な最大の原因で、日本でのがんの死亡のうち、男性で40%、女性で5%は喫煙が原因と考えられている。特に肺がんは喫煙との関連が強く、肺がんの死亡のうち、男性で70%、女性で20%は喫煙が原因とみられている。

 日本人のデータで、たばこを吸う人のがんで死亡するリスクは、吸わない人に比べて男性で2倍、女性で1.6倍に上昇することが明らかになっている。部位別にみると、男性では喉頭がん、尿路がん、肺がんで5倍前後、女性では肺がんで4倍、子宮頸がん、口唇・口腔・咽頭がんで2倍以上にリスクが上昇する。

 喫煙とがんの関連については、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)が、肺がんをはじめとするさまざまながんの原因となると結論付けている。また、喫煙年数が長く、1日の喫煙本数が多く、喫煙開始年齢が若くなるほど、がんのリスクが高まることが示されている。

 たばこに含まれる発がん物質は約60種類あり、その多くは体内の酵素で活性化された後、DNAと結合し、遺伝子変異を引き起こす。こうした遺伝子変異が、がん遺伝子、がん抑制遺伝子などに蓄積することで細胞ががん化すると考えられているが、突然変異の誘発機構やがん種による違いなど明らかになっていないことも多い。

 そこで、国立がん研究センターなどの研究チームは、さまざまな臓器のがんでのDNA(遺伝子)異常に、喫煙がどの程度、影響を及ぼしているのかについて、17種類のがんについて計5,243例のがんゲノムデータをもとに検討した。
1年間毎日1箱のたばこを吸うとDNA変異が肺がんで150個
 その結果、生涯喫煙量とその患者のがん細胞に見られる突然変異数には、統計的に正の相関がみられ、喫煙が複数の分子機構を介してDNA変異を誘発していることを明らかになった。

 1年間毎日1箱のたばこを吸うと、DNA変異が、肺がんでは150個、喉頭では97個、咽頭では39個、口腔では23個、膀胱では18個、肝臓では6個起こると推計されている。

 さらに、変異パターンの解析から、喫煙によって発がんリスクが上昇するがんには少なくとも3つのタイプが存在することが判明。

 「タイプ1」はたばこ由来発がん物質暴露が直接的に突然変異を誘発しているがん(例:肺がん、喉頭がん、肝臓がん)、「タイプ2」はたばこ由来発がん物質暴露が間接的に突然変異を誘発しているがん(例:膀胱がん、腎臓がん)、「タイプ3」は今回の解析で明らかな変異パターンの増加が認められなかったがん(例:子宮頸がん、膵がん)だという。
喫煙関連のがんの予防や治療につながる成果
 これらの研究成果から、がん発症において喫煙が全ゲノム解読レベルで突然変異を誘発していることが確かめられた。さらに、今回たばこ由来発がん物質暴露が間接的に突然変異を誘発するタイプのがんが認められたことで、今後喫煙による間接的な突然変異誘発機構の活性化に関する詳細な分子機構が解明されることで、喫煙関連のがんの予防や治療が進むことが期待されると、研究グループは述べている。

 国際がんゲノムコンソーシアムでは、現在、日本・英国・米国を含め17カ国が参加し、国際協力によって78のがんゲノムプロジェクトが進められ、すでに1万6,000例を超えるがんサンプルにおける遺伝子異常のデータが蓄積され、データとして公開されている。日本からは、国立がん研究センター、理化学研究所、東京大学が連携し、アジアでの重要ながんである肝臓がん、胆道がん、胃がんについて、大規模ながんゲノム解読データを解読・公開している。

 今回の研究は、国立がん研究センター研究所がんゲノミクス研究分野の柴田龍弘分野長、十時泰ユニット長、理化学研究所統合生命医科学研究センターゲノムシーケンス解析研究チームの中川英刀チームリーダー、藤本明洋客員研究員、米国ロスアラモス国立研究所Ludmil B. Alexandrov博士、英国サンガー研究所Michael Stratton所長らの日英米韓国際共同研究グループによるもの。研究成果は、科学誌「Science」に発表された。

国立がん研究センター研究所がんゲノミクス研究分野
(mhlab)  
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