うつ病を血液検査で判定 健診でうつを早期発見できる可能性
2016.12.28
 九州大学と大阪大学、国立精神・神経医療研究センターなどの共同研究グループは、うつ病の重症度に関連する血中の成分をみつけたと発表した。研究が進めば、健診などの血液検査でうつ病の客観的な診断できるようになり、早期発見・治療ができるようになる可能性がある。
気分の落ち込みや死にたい気持ち
重症度の評価が必要
 九州大学と大阪大学、国立精神・神経医療研究センターなどの共同研究グループは、うつ状態の患者の血液から、うつ病の重症度に関連する血中代謝物を発見したと発表した。

 うつ病は、抑うつ気分(気分の落ち込み)、意欲低下(喜びや意欲の喪失)に加えて、罪悪感、自殺念慮(死にたい気持ち)など、さまざまな症状をきたす精神疾患で、自殺に至る危険性も高く、その重症度の評価が不可欠だ。

 うつ病以外にも身体疾患やさまざまなストレスにより抑うつ症状を呈することがあり、抑うつ重症度評価は、精神医療に限らず多くの分野で重視されている。

 これまで抑うつ重症度評価は、精神科医による診察・面接により行う方法が一般的で、自記式(アンケート)による抑うつ重症度評価法も開発されているが、いずれも本人の主観的な訴えや態度にもとづいており、評価が難しいことも少なくなく、より客観的な評価法の開発が求められている。
うつ病に関連する代謝物を同定 100種類以上を計測
 研究チームは、抑うつ症状を示す患者を対象に、面接による「ハミルトンうつ病評価尺度」(HAM-D)と自記式質問票による「PHQ-9」という2つの方法でうつ重症度の評価を行った。

 同時に、患者から採血を行い、数多くの代謝物を微量の血液成分から同時計測できる「メタボローム解析」とよばれる手法を用いて、100種類以上の血中代謝物を計測した。

 血中代謝物と抑うつ重症度の相関を調べたところ、抑うつ重症度に関連する血中代謝物20種類を同定することに成功した。そのうち、「3-ヒドロキシ酪酸」「ベタイン」「クエン酸」「クレアチニン」「γ-アミノ酪酸」(GABA)の5つの代謝物が、抑うつ重症度に強く関連することが分かった。

 さらに、抑うつ気分、罪悪感、自殺念慮など、それぞれの症状によって関連する代謝物が異なることも判明した。例えば、自殺念慮に関しては、脳内免疫細胞「ミクログリア」との関連が示唆される「キヌレニン」経路の代謝物が強く関連していた。

 研究チームは、人工知能などで活用されている解析技術である機械学習を導入して、数種類の代謝物情報から自殺念慮の有無やその程度を客観的に予測するためのアルゴリズムも開発した。
うつ病の治療の早期発見・介入が可能に
 うつ病の治療では早期発見・早期介入が重要だが、多くの患者が最初に受診するのは精神科以外の診療科だ。今回の成果を手がかりとして、近い将来、精神科以外の医療機関や健診で抑うつ状態の客観的評価ができるようになれば、うつ病を早い段階で発見し介入することが可能になる。

 さらに、うつ病の病態解明に加えて、発見した代謝物をターゲットとした食品・薬品の開発促進への波及も期待できるという。

 「今回の研究は、さまざまなバックグランドをもつ研究者が集い、うつ病をはじめとする精神疾患の病態解明と治療法開発を目指したものだ。採血による簡便な客観的評価法が開発できれば、精神科以外の医療機関や健診などでうつ病を早い段階で発見し、治療できるようになる」と、研究者は述べている。

 研究は、九州大学大学院医学研究院の神庭重信教授(精神医学分野)、加藤隆弘特任准教授(先端融合医療レドックスナビ研究拠点)、康東天教授(臨床検査医学)、瀬戸山大樹助教(同上)、大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授、国立精神・神経医療研究センター神経研究所の功刀浩部長(疾病研究第三部)、服部功太郎室長(疾病研究第三部・NCNPバイオバンク)らの研究チームによるもの。日本医療研究開発機構(AMED)の障害者対策総合研究開発事業が支援した。研究成果は、国際科学雑誌「PLOS ONE」に発表された。

九州大学大学院医学研究院精神病態医学
大阪大学大学院連合小児発達学研究科
国立精神・神経医療研究センター神経研究所
(mhlab)  
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