アルコールに注意 飲む量を減らせば改善する 「減酒外来」を開設
2017.05.24
 アルコールは適量の場合はストレス解消の効果を期待できるが、量が増えると確実に健康を損なう原因になる。アルコールの量を減らすための「減酒外来」が開始された。

 お酒は「百薬の長」と言われる通り、ストレスを和らげたり、リラックスできる効果がある。対人関係を円滑にする目的で飲酒する人も多い。しかし、過度な飲酒はさまざまな健康問題の原因になる。
お酒は飲み過ぎてしまうのが普通
 はじめは「少し」と思っていても、つい飲み過ぎてしまうのがお酒だ。アルコールに含まれるカロリーは1gあたり7kcalで、脂肪の9kcalに次ぐ高カロリーの食品だ。カロリーの他の栄養成分はほとんど含まれない(非蒸留酒には糖質が含まれる)。

 さらには、アルコールには食欲を高める作用があり、飲み過ぎは肥満やメタボリックシンドロームを助長する。また、大量飲酒は高血圧を引き起こし、血液中の中性脂肪を高めるなどの有害な影響が多い。

 厚生労働省の「健康日本21」(第二次)では、生活習慣病のリスクを上げる飲酒は、1日に男性では40g以上、女性では20g以上とされている。アルコールは、ビール500mLに20g、チューハイ350mLに20g、日本酒1合(コップ1杯)に22g、ワイン120mL(グラス1杯)に12g含まれる。
過度の飲酒は糖尿病リスクを高める
 糖尿病の人にとってアルコール飲料は、たとえば5%ビールであればアルコールと糖質とで100mLあたり40kcalに相当するので、食事療法のカロリーに組み込んで計算するべきだ。

 さらにアルコールは、肝臓の障害、膵臓の障害などの危険性を高める。糖尿病の人がアルコール依存になると、断酒や減酒できないと数年で死亡する危険性が極めて高くなるという調査結果がある。

 糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンが不足したり、十分に働かなくなることで起こる疾患。インスリンは体内を循環し、ブドウ糖などの栄養素が細胞に取り込まれる作用をコントロールしている。

 適度な飲酒はインスリンへの反応(感受性)が改善すると考えられているが、長期間の飲酒や多量飲酒により、インスリンの分泌量が低下、糖尿病リスクを高めることが知られている。
肝臓がもっとも障害を受けやすい
 過度の飲酒によってもっとも障害を受けやすい臓器は肝臓だ。その原因として、代謝産物であるアセトアルデヒドや酸化ストレスの蓄積、微小循環障害に伴う炎症などが考えられる。

 飲酒量が多いほど、また飲酒期間が長いほど、肝臓は障害を受けやすくなる。飲酒による初期の肝臓病が「脂肪肝」だ。肝臓は「沈黙の臓器」であり、初期の段階では症状はないことが多い。最近は肥満や2型糖尿病による脂肪肝も増えており、飲酒により相乗的に肝臓が悪くなるおそれがある。「これくらいなら飲んでも大丈夫だろう」といった判断は危険だ。

 お酒を飲む頻度の高い人は、症状がなくとも定期的にAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの血液検査を受けるべきだ。アルコールにより肝臓病を治療するためのもっとも効果的な方法は、減酒すること。
アルコールは血糖値に影響を与える
 アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝に伴って血糖値に影響を与える。多量の飲酒は糖尿病の危険性を高め、特に肝障害や膵障害が加わるとコントロールが難しい糖尿病になるため、糖尿病患者は多量飲酒を避けた方が良い。

 アルコールは低血糖を引き起こすことがある。特に食事を十分にとらずに飲酒すると低血糖になりやすい。それは食事量低下のため肝臓のグリコーゲンが減少しており、さらにアルコールの代謝に伴い糖新生(糖質以外の物質からグルコースを産生する作用)が抑制されるためだ。

 インスリン注射や経口血糖降下剤などでの治療中の患者では、低血糖がより起こりやすくなるので、食事をとらずに飲酒することは原則として禁止されている。食事をとるのであれば、低脂肪で高タンパク質の食品(豆腐・枝豆・イワシなど)を食べると良い。

 また、飲酒により血圧が高くなると、脳卒中を発症する危険性も高まる。ほぼ毎日、ビールなら2本以上、日本酒なら2合以上飲む人は、脳卒中の危険性が高くなるという調査結果がある。飲酒量を減らすと、血圧は1~2週間ぐらいで減らした分だけ低下する。脳卒中を予防するために、アルコールを飲み過ぎないことが大切だ。
飲酒量を減らして治療する「減酒外来」
 国立病院機構 久里浜医療センターは、アルコールを飲み過ぎている人を対象に、飲酒量を減らして治療する「減酒外来」を4月に開始した。

 従来の治療法は飲酒をやめる断酒だが、お酒を断つことなど難しくてできないと最初からあきらめてしまう人が少なくない。そこで、同センターが開始した「減酒外来」(AHRP)は、お酒を減らしたり、お酒との付き合いを変えてみたいという人を対象にしており、軽症者を含め多くの人に治療を始めてもらいたいという考えで始められた。

 厚生労働省によると、多量飲酒の人の数は860万人、アルコール依存症の疑いのある人は440万に上る。ところが、治療を受けている人は、わずか数万人ほど。

 減酒外来では、飲酒についての客観的な評価を受け、飲酒の問題の程度を知ることから始められる。患者はまずは、血液・尿検査、骨密度検査、腹部エコー検査、頭部MRI検査などを受ける。
お酒をやめなくとも量を減らすだけで効果を得られる
 次に、飲酒の効用(メリット)と損失(デメリット)を挙げて、このまま飲み続ける方が得か、減らす方が得かを考える。次に医療スタッフが「どのような飲み方にしたいか」など、患者が目標とするアルコールとの付き合い方をチェック。

 その後、アルコール治療専門の医師が飲酒問題のレベルについて診断基準を用いて評価する。飲酒についての客観的な評価をすると、飲酒の問題の程度がわかる。そして「問題のない飲み方はどうすればいいか」「お酒の量を減らすために」など、患者の希望を聞いた上でアドバイスを行う。

 患者は医師からアドバイスシートなどを使って提案を受け、お酒の飲み方をどのように変えるか、実行できそうな具体的な目標を立てる。最初は今までより少し減らすだけの目標でも効果を期待できるという。

減酒外来(国立病院機構 久里浜医療センター)
アルコール依存症(厚生労働省 みんなのメンタルヘルス)
(mhlab)  
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