日本の介護の現状をレポート 「介護社会」の本格的な到来に備える
2017年6月22日 18:07
 日本は世界トップクラスの長寿を誇っているが、今後は75歳超の高齢者が大量に出現し、介護が本格化する。2015年度の介護給付費の受給者数は、はじめて600万人を突破した。

 日本の潜在介護期間は他の先進国に比べ短い傾向がみられ、居宅介護支援(ケアマネジメント)も比較的充実しているが、今後は介護体制のさらなる整備と効率化が不可欠だ。

 一方、「在宅介護」を行っている中高年の7割が「精神的につらい」、6割「肉体的につらい」と感じている現状も伝えられている。
1人が利用する介護サービスの回数が増加 介護給付費等実態調査
 厚生労働省が昨年発表した「介護給付費等実態調査」によると、2015年度の年間実受給者数は605万1,100人(対前年度比2.9%の増加)となっており、はじめて600万人を突破した。内訳を見てみると、介護予防サービス155万9,500人(同3.2%の増加)、介護サービス 484万(同2.8%の増加)となっている。

 この調査は、介護サービスにかかる給付費の状況を把握するもので、介護報酬改定などの基礎資料となる。厚労省は毎月、調査結果を公表しており、昨年の年表は2015年5月審査分から2016年4審査分を集計している。集計対象は、都道府県の国民健康保険団体連合会が審査したすべての介護給付費明細書・給付管理票だ。

 受給者の状況をみてみると、2015年度の累計受給者数は6,193万2,000人で、前年度に比べて224万6500人(3.8%)増加した。同一人物を名寄せした実受給者数は605万1100人で、前年度に比べて16万8100人(2.9%)の増加となっている。実受給者数よりも累計受給者数の伸びが1ポイント近く大きいことから、「1人が利用するサービスの回数」が増加している状況が窺える。

 受給者1人当たりの費用額は15万7,000円(対前年同月増減額800円の減少)となっており、サービス種類別にみた受給者1人当たり費用額をみると、介護予防サービスでは3万6,600円(同4,400円の減少)、介護サービスでは19万900円(同400円の減少)となっている。

 2015年4月から特養ホームの新規入所者が「原則、要介護3以上」とされており、これと費用額の減少にどのように影響しているか、今後のさらなる分析が期待される。
介護が必要となる可能性が高い期間は男性 8.0年、女性 9.6年
 日本の介護が必要となる可能性が高い期間(潜在介護期間)は男性 8.0年、女性 9.6年であることが、ニッセイ基礎研究所の篠原拓也主任研究員の分析で判明した。

 世界保健機関(WHO)は2000年に「健康度調整平均寿命」(HLE)を提唱している。これは、病気やケガのために健康を損なう期間を考慮して、「完全な健康状態」で生活できる平均年数を意味する。

 篠原主任研究員は、平均寿命からHLEを差し引いた期間を、潜在介護期間と設定。潜在介護期間は、女性で9.6~11.4年程度、男性で8.0~9.6年程度となっており、日本は男女ともこの期間が比較的短いという。一方、女性はスペイン、アメリカ、男性はスイス、スウェーデンでこの期間が長い。

 介護サービスの利用状況をみてみると、介護施設への入居状況は、日本は介護施設入居者割合がイタリアやカナダと並び、中位に位置する。急増する介護施設の需要に対して、供給が追いついていないことが考えられるという。主要国では、オランダ、スウェーデンの割合が高い。一方、アメリカやスペインは割合が低い。

 そのほか篠原主任研究員は、日本の介護を西欧諸国の介護と比較した結果、▽支出や利用状況の面は、これまで主要国の中位並みだったが、近年、高齢化の進行に伴い、支出が増加しつつある、▽施設の職員が少ない半面、居宅介護の従事者は充実している――といったことも明らかにしている。

 潜在介護期間において、ケアの提供を通じて、QOL(生活の質)の改善することは、各国共通の課題となっている。日本は世界トップクラスの長寿を誇っているが、今後は75歳超の高齢者が大量に出現し、介護が本格化するため、介護体制の整備と、さらなる効率化をはかることが不可欠となっている。
「在宅介護」はつらい 在宅介護を始めた年齢の平均は50.9歳
 そんな中、大王製紙は在宅介護を行っている男女300名を対象に「介護と年齢」に関する調査を実施した。調査は今年の5月2日から9日にかけて行った。

 それによると、在宅介護を始めた年齢の平均は50.9歳で、在宅介護をするかもしれないと意識し始めた年齢の平均は48.2歳だった。「在宅介護」が始まったときの自身の年齢を、どう捉えているか聞いたところ、「思ったよりも自分が若い年齢で『在宅介護』が始まった」と答えた人が6割超(61%)という結果になった。

 また、71%の人が「在宅介護で諦めなければならないことが予想よりも多かった」と回答し、「自由な時間を持つこと」(79%)、「旅行すること」(70%)、「趣味を続けること」(48%)、「仕事を続けること」(36%)などを諦めたと回答した。

 自身のリフレッシュを諦めがちになる「在宅介護」に対し、予想外のつらさを感じる人も多いようだ。具体的には「精神的につらい」と回答した人が7割近く(69%)に上り、「肉体的につらい」人も6割超(61%)となり、精神面でも肉体面でも予想外のつらさが待ち受けていると感じる人が多いことが判明

 「精神的につらい」と感じたことを聞くと、1位に「排せつ介助(おむつ交換・トイレ介助など)」(68%)、2位に「移動 介助(立つ・座る・歩行など)」(63%)、3位に「食事介助(食事を食べさせる・料理を作ること)」(53%)が続く。

 予想よりも早く始まったと感じている人が多い在宅介護。介護そのものに含めて、自分自身の生き方についても早めに備えておく必要がありそうだ。

平成27年度 介護給付費等実態調査の概況(厚生労働省)
ニッセイ基礎研究所
大王製紙
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