脳の健康を保つための「ライフ シンプル 7」 認知症は予防できる
2017.10.19
 健康的な生活スタイルは、あなたの脳の健康を維持するためにも必要だ。米国心臓学会(AHA)は、認知症や認知機能の低下を防ぐために、7つの生活スタイルを提唱している。
脳は血液の流れを必要としている
 脳は、心臓などの重要な臓器と同じように、常に十分な量の血液を必要としている。しかし、年齢を重ねると動脈硬化が進み、血管が徐々に狭くなり、血液の流れ(血流)が悪くなることが多い。なかでも、アテロームと呼ばれる脂肪性の沈着物が動脈の内側に蓄積する「アテローム性動脈硬化症」は、心筋梗塞や脳卒中などの原因として知られている。

 「アテローム性動脈硬化症の原因になる不健康な生活スタイルは、脳の血管にとっても悪いことが分かりました。動脈硬化が進みやすい生活をおくっていると、年齢を重ねてから、認知障害やアルツハイマー病などの危険性が上昇します」と、マーシー ヘルス ハウエンシュタイン神経科学研究所のフィリップ ゴレリック氏(血管神経学)は言う。

 米国心臓病学会(AHA)は、心臓病や脳卒中を予防するために、「7つの生活習慣」(ライフ シンプル 7)を推奨している。これは、さまざまな疫学研究の結果をもとに作成されたものだ。「ライフ シンプル 7」は脳の健康を保ち、理想的な状態を維持するために役立つ可能性がある。

(1)血圧を管理する

 高血圧があると、細い血管の血液の流れが悪化しやすくなり、十分な酸素と栄養素を心臓と脳に供給するのが難しくなる。血流の不足は認知機能の低下を引き起こす。さらに、活性酸素が細胞を障害する「酸化ストレス」が亢進しやすくなり、血管内皮の炎症が起こりやすくなる。さらに、高血圧を放置しておくと、脳内で認知症の原因となる物質が増えやすくなる。

 高血圧は自覚症状が乏しく自分では分からないので、定期的に検査をすることが重要となる。健康な体重を維持すること、塩分の摂取量を減らすこと、医師に処方してもらった薬をきちんと飲むことが大切だ。

(2)コレステロールを管理する

 コレステロールの異常は、脂質異常症の原因になり、死因の上位を占める狭心症や心筋梗塞などの心臓病や、脳出血や脳梗塞などが進行しやすくなる。脂質異常症によって動脈硬化が進行すると、脳内の血管も硬化が進んでしまい、通常よりも血液の流れが悪くなる。

 悪玉のLDLコレステロールを減らすために、動物性食品の摂り過ぎを抑えて、野菜、果物、海藻などをバランスよく食べることが必要だ。

(3)血糖値を下げる

 糖尿病のある人ではそうでない人に比べ、アルツハイマー病や血管性認知症の発症リスクが2~4倍に上昇するという報告がある。糖尿病のある人が、血糖値が高い状態を放置していると、心臓病や脳卒中の危険性も高まる。血糖値をコントロールすれば、これらの合併症を防ぐことができる。

 脳の神経細胞のエネルギー源のほとんどは糖で、脂肪などは使われない。そのため、脳神経細胞は常に糖を取り込まなければならないが、そのときに必要な働きをするのがインスリンだ。インスリンの不足や、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」は、認知症の進行に影響していると考えられている。

 糖尿病は脳の動脈硬化も促進する。動脈硬化が進めば脳梗塞の発症リスクが高くなり、血管性認知症にもなりやすくなる。糖尿病のある人は血糖コントロールをしっかり行うことが大切だ。

(4)運動をする

 運動を習慣として続ければ、血糖値・血圧値が下がり、悪玉のLDLコレステロールが減り、善玉のHDLコレステロールが増え、骨が丈夫になり骨粗鬆症の予防になる。がんの発症リスクも下げられる。ストレス解消にもつながり、夜はよく眠れるようになる。

 運動を行うと、酸素を体内に取り入れられ、脳の血液量が増える。酸素は血液によって運ばれ、脳の血管にも酸素を含んだ血液が送り込まれる。脳内の血液が増えることで、脳の神経細胞であるニューロンが作られる。神経細胞を結び付けるシナプスも活発に働くようになる。

 1日30分のウォーキングなどの運動を週に5日以上続けて、週に合計2.5時間行うのが目標。1回10分の運動を3回に分けて行っても効果がある。

(5)健康的な食事

 食事と認知症の予防の関連は大きいことが最近の研究で分かってきた。塩分やコレステロールの摂りすぎは動脈硬化を促し、血管を老化させる。不健康な食事により体内の活性酸素が増えると、細胞の新陳代謝が妨げられ、老化が促される。

 健康的な食事を続ければ、体重や血圧値、血糖値、コレステロール値を改善できる。カロリーの摂り過ぎを防ぎながら、必要な栄養素をバランス良く摂ることが大切だ。 そのために、1日3食をしっかりと食べ、野菜や果物、海藻、大豆食品、魚類などを十分に摂ることが勧められる。

 塩分の摂り過ぎも脳の血管の老化を促す。塩分は1日3gに抑えるのが理想的だが、それが無理な場合は6g以下を目指そう。清涼飲料や缶コーヒーを飲むときは、糖分の摂り過ぎにも注意する。コップ1杯のコーラのカロリーは90kcalぐらいだ。

(6)標準体重を維持する

 肥満は体にとって異常な状態で、特に内臓脂肪が一定以上に多くなると心臓の負担が増え、脳への血流も悪くなる。肥満に脂質異常や、高血圧、高血糖などが重なると、心臓の負担はさらに増える。肥満の人は体重を減しただけでも、これらの検査値が改善することが多い。

 肥満、糖尿病、脂質異常症を放置していると血流が悪くなり、血液が固まりやすい状態になる。そうなると心筋梗塞や脳梗塞だけでなく、認知症のリスクも高まる。脳の血流量を増やし、脳の機能を高めるために、肥満を抑制し、標準体重を維持することが大切だ。

 1日の食事で必要なカロリーを確かめて、それを超えて食べ過ぎないようにし、ウォーキングなどの運動を続ければ、体重を減らすことができる。食べ過ぎを防ぐには、体重を朝晩はかることが効果的だ。体重が大きく変化する場合は、食生活に何か問題点がないか、点検をして改善しよう。

(7)たばこを吸わない

 たばこに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用がある。たばこを吸う人は、禁煙すれば脳血流を増やせる。脳の働きを正常に保つためには、十分な脳血流量が保たれていることが必要で、禁煙がその役に立つ。

 喫煙は心臓病や脳卒中だけでなく、がんや慢性肺疾患、呼吸器疾患などの発症率を高める。たばこをやめるだけでこれらの病気のリスクを減らせる。たばこを吸う人はいますぐ禁煙しよう。そうすれば、数年で心臓病や脳卒中の発症リスクを、非喫煙者と同程度に下げることができる。
脳の血流量を増やせば認知機能の低下を抑えられる
 脳を健康に保てれば、五感を通じて情報や刺激を受け取り、社会的な交流を通じて、認知力や注意力を高めることができる。脳の能力を高めることは、学習や記憶、コミュニケーション、問題解決や判断をするために不可欠だ。

 米国心臓学会(AHA)は、脳を健康に保つために、できるだけ若いうちから健康な習慣を身に着けることを勧めている。心臓病や脳卒中の原因となる動脈硬化は、30歳を過ぎた時点ですでに始まっているという。

 認知症を発症してしまうと、治療や介護に高額な費用が必要となり、がんや他の血管性疾患よりも高額になる。世界では認知症の治療や介護のために、220兆円(2兆ドル)以上の予算が費やされている。

 中年期以降の糖尿病、高血圧、脂質異常症といったリスク因子が、将来的に起こるかもしれない認知症の発症を予測するために、重要な役割を果たす。

 「認知症との関連が認められたリスク因子は、いずれも生活習慣の改善により修正が可能です。認知症の多くは、予防や遅延が可能なのです。不健康な生活スタイルをもつ人は、ご自分の生活を見直して、ひとつでも多く改善することをお勧めします」と、ゴレリック氏は述べている。

Seven steps to keep your brain healthy from childhood to old age(米国心臓学会 2017年9月7日)
Defining Optimal Brain Health in Adults: A Presidential Advisory From the American Heart Association/American Stroke Association(Stroke September 2017年9月7日)
(mhlab)  
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