「ミドリムシ」からメタボを改善する成分 「痩せるホルモン」を促進
2018.06.06
 産業技術総合研究所などの研究グループは、ミドリムシから「痩せるホルモン」の分泌を促進させる物質を作り出すのに成功した。
 メタボリックシンドロームのマウスに与えたところ、内臓脂肪が減り、体重増加を抑制する効果を得られたという。
 詳細は、5月24〜26日に東京国際フォーラムで開かれる「第61回日本糖尿病学会年次学術集会」で発表される。
未来食材として注目されるミドリムシ
 ミドリムシ(学名:ユーグレナ)は、植物と動物の両方の特徴をもち、ビタミンやミネラルなど59種類の栄養素を含む藻の一種で、さまざまな健康食品などが研究・開発されており、未来食材として注目を集めている。

 健康寿命を延ばすための取組みの、大きな障害となっているのがメタボリックシンドロームと、それにより発症リスクが高まる2型糖尿病だ。糖尿病はさまざまな合併症を引き起こし、患者と社会の双方に大きな負担をもたらしている。

 糖尿病やメタボリックシンドロームの治療として、食事制限や運動療法が行われているが、その効果は個人差が大きい。そのため、効率よく内臓脂肪をコントロールする薬剤の開発が求められている。

 一方、藻の一種である「ミドリムシ」(学名:ユーグレナ)は、動物と植物の両方の性質をもつ生物で、主に食物として応用されている。ビタミンやミネラルなど豊富な栄養素を含んでいるのに加え、ミドリムシだけにしか含まれない「パラミロン」という成分がある。

 パラミロンは、ミドリムシが細胞内に産生する高分子で、ブドウ糖が2,000個程度つながってできている。研究チームは、ミドリムシの大量培養技術を開発した企業と共同で、本来は水に溶けないパラミロンを水溶性に変える技術の開発に成功した。
ミドリムシの生成物がコレステロール値を減らす
 パラミロンはキノコ類や海藻類などにも含まれるβ-グルカンの一種で、体内の有害物質を吸着する作用がある。吸着したまま一緒に身体の外に排出する、いわばスポンジのような働きをする。

 血液中のコレステロール値が高い状態を放っておくと、動脈硬化が進行し、脳卒中や狭心症、心筋梗塞などの血管に関する病気を発症しやすくなる。そのため、「どのように脂質をコントロールするか」が重要になる。

 脂質をコントロールする治療は食事療法や運動療法が基本だが、多くの場合でこれだけではうまく脂質をコントロールができない。

 肝臓はコレステロールを合成し、コレステロールを消化管へと排泄する役割を担っている。肝臓から排泄されるコレステロールは胆汁酸というかたちで分泌される。

 胆汁酸の多くは腸から吸収されて再びコレステロールとして利用される。このサイクルを「腸肝循環」と言う。消化管へと排泄された胆汁酸は小腸から吸収されて再び肝臓へと戻っていく。

 「胆汁酸吸着薬」は、胆汁酸が小腸から再び吸収されるのを阻害する薬剤。この薬の作用で、胆汁酸の腸肝循環が妨げられる。胆汁酸の原料はコレステロールであるため、胆汁酸の排泄を促進させることで、コレステロール値を減らすことができるという仕組みだ。
インスリン分泌を促す「GLP-1」が3倍多くに増える
 ミドリムシのパラミロンから作った物質を混ぜた高脂肪食をメタボのマウスに5週間にわたって与えたところ、物質が入っていないエサを食べたマウスに比べて、体重増加が50%程度に抑えられ、内臓脂肪量は33〜38%減少した。

 また、血糖値を一定に維持するためのインスリン分泌量が低下したことから、インスリン抵抗性が改善されたとみられる。

 さらに、糖尿病患者の血糖値を低下させるインスリンの分泌を促すホルモン「GLP-1」が3倍多く分泌されることも確認された。

 GLP-1はインスリン分泌を促すホルモンのひとつであり、糖尿病治療薬の開発の重要なターゲットとなっている。GLP-1は生体内では数分以内に壊れてしまうため、その作用を長続きさせるための薬剤の開発が続けられている。

 また、2型糖尿病患者ではGLP-1分泌量が少ないことから、その分泌を刺激する薬剤の開発も求められている。

 今後は、今回発見された作用メカニズムの解明を進めながら、大学などの研究機関や製薬企業を含めた新たな研究開発体制の構築に取り組む予定だ。

 糖尿病やメタボリックシンドロームに関する今回の研究成果は、研究は、産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門分子細胞育種研究グループの芝上基成上級主任研究員らが、アルチザンラボ、神鋼環境ソリューションと共同で行ったもの。
産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門
(mhlab)  
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