「熱中症」と「エコノミークラス症候群」を予防する方法 被災地で緊急課題に
2018.07.17
 西日本を中心に、広い範囲で記録的な大雨が続いた。被害を受けた地域で「熱中症」や「エコノミークラス症候群」の危険性が高まっている。これらは適正な対策をすれば予防が可能だ。
熱中症、エコノミークラス症候群に対策
 西日本を中心として広い範囲で記録的な大雨に見舞われ、各地で甚大な被害が相次いだ。雨で地盤がゆるんでいる地域や、家屋の浸水害などで復旧に時間がかかる地域は、この後も気象情報や市町村の避難情報などに注意が必要だ。

 梅雨明け後は「暑さ対策」(熱中症対策)が必須となる。気象庁によると、西日本から東日本にかけて30℃を超える厳しい暑さになる日が多くなり、夜も気温が下がらず熱帯夜が続く可能性がある。

 復旧作業中や、たくさんの人が集まる避難所などでは、毎日の熱中症情報をチェックして、ふだん以上に「熱中症」と「エコノミークラス症候群」への対策を心がける必要がある。
熱中症は予防できる 十分な対策を
 熱中症は気温が高いなどの環境下で、体温調節の機能がうまく働かず、体内に熱がこもってしまうことで起こる。

 熱中症にかかりやすいのは高齢者、糖尿病など慢性疾患のある人だ。特に糖尿病の人は、高血糖の状態が続くと神経障害や皮膚の血流障害が起こりやすく、熱中症の症状に気付きにくくなっている場合があるので注意が必要だ。

 消防庁の調査によると、2017年に熱中症で救急搬送された人の数は、7月は約2.7万人、8月は約1.7万人だった。発生場所は、住居がもっとも多く37%、次いで屋外が14%、道路が14%となっている。

 熱中症というと屋外での対策に目がいきがちだが、屋内で熱中症を発症する人も少なくない。節電のために冷房などの使用を控えたり、温度を高めに設定したりしている場合は、屋内でも熱中症を発症しやすい。十分な対策が望まれる。
熱中症の主な症状 大量の発汗やめまいは熱中症の症状
 具体的に、熱中症になるとどのような症状が現れるのだろうか。日本救急医学会では、熱中症の症状を、重症度によってI度からIII度までの三つに区分している。熱中症は急速に症状が進行し、重症化するので、軽症の段階で早めに異常に気づき、応急処置をすることが重要だ。
熱中症を予防するために 基本は「水分補給」をこまめにすること
 もし熱中症かなと思ったら、早めに対処することが重要だ。体の中の水分が不足すると、熱中症、脳梗塞、心筋梗塞など、さまざまな健康障害のリスク要因となる。

 「のどが渇く」のは「体内の水分が不足している」というサイン。汗と尿の量がいつもより少なくなったり、尿の色がいつもより濃くなったら要注意だ。

 運動中や運動後に必要な水分を摂取するだけでなく、運動の前にも水分補給をこころがけたい。暑くて湿度が高い環境では、喉の渇きを感じてから水分を補給しても間にあわない場合がある。

 外出する際は帽子をかぶるなどして直射日光を避け、体調が悪いときは無理をしないようにしよう。汗を吸収してくれる吸水性に優れた素材の服や下着を着ると効果的だ。また、えり元をなるべくゆるめて、熱気や汗が出ていきやすいように通気しよう。

 食事をきちんととれていれば、日常で必要な塩分を補充できているので、特に塩分をとる必要はないが、運動などで大量に汗をかいたり脱水気味のときには、低カロリーのスポーツドリンクや食塩を少し加えた水で塩分を補給する必要がある。

 腎臓病、心臓病、高血圧などで、水分や塩分の摂取量が制限されている場合は、前もって適切な摂取量をかかりつけ医に相談しておこう。

 また、夜寝ている間は水分補給をしないので、寝る前や、起きた後にはコップ1杯程度の水分をとるようにしよう。
熱中症を予防するために エアコンや扇風機を上手に活用する
 エアコンや扇風機も上手に使おう。節電は大事だが、熱中症になってしまっては元も子もない。エアコンは、自動調節、就寝中用の機能やタイマーなどを上手に利用するとよいだろう。

 体感に頼らず、温度計、湿度計で温度や湿度を確認し、室温は28℃以下に、湿度は70%以下を目安に調整する。

 扇風機を使い室内の空気を程よく循環させると、エアコンの設定温度を低くしなくても室温を下げることができる。窓をすだれやカーテン、つる性植物を使った「緑のカーテン」などで覆い、直射日光を遮断するのも有効だ。

 高齢者や神経障害のある人は発汗が乏しくなり、体温調節が上手にできないことがある。また、加齢とともに、汗をかく量が減少する。汗が皮膚から蒸発するときに熱が奪われて体温が下がるため、汗の量が減ると、体温調節がしにくくなる。

 部屋が暑いときに、「エアコンのスイッチを入れる」「冷たい飲み物を飲む」など、熱中症の危険を察知して回避する行動ができない場合がある。体感だけに頼るのではなく、温度計や湿度計を活用し、温度や湿度が目に見えるようにしておくことが大切だ。
熱中症を予防するために3環境省が公開する暑さ指数(WBGT)を活用
 高温注意情報は、テレビやラジオの天気予報のほか、気象庁ウェブサイトで知ることができる。気象庁ウェブサイトでは、翌日または当日の予想気温を毎日グラフで表示している。

 環境省は熱中症予防情報サイトを開設し「暑さ指数(WBGT)」を公表している。気温や湿度、放射熱をもとに、「危険」「厳重警戒」「警戒」「注意」「ほぼ安全」という5段階で指数化している。

 同サイトでは、全国841地点で、当日、翌日、翌々日の3時間毎の暑さ指数の予報値および現在の暑さ指数の値を色分けて公開している。

 これらの情報も活用し、暑さから身を守ることができる。熱中症予防サイトはスマートフォンにも対応し、無料のメール配信サービスも利用できる。

 危険な場合は外出をなるべく避け、涼しい室内に移動することが勧められる。熱中症は「暑さを避ける」「部屋を涼しくする」「休憩をとる」「水分をとる」「栄養をとる」で防げる気象災害だ。

 屋外での運動は、気温が35℃以上の「厳重警戒」の場合は中止する。外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意することが大切。
 もし熱中症かなと思ったら、早めに対処することが重要だ。大量の汗をかいたりめまいを感じたりした際は、涼しい場所に移って体を冷やし、水分や塩分を取る。自分で水分・塩分を取れないほど体がだるければ、すぐ医療機関を受診しよう。

熱中症を予防するために4低ナトリウム血症に注意
 運動時に水やスポーツドリンクにより水分を過剰に摂取すると、「低ナトリウム血症」(EAH)と呼ばれる状態に陥るおそれがある。運動時に汗を大量にかいて水分補給をするときは、塩分も補給することが必要だ。

 低ナトリウム血症は、汗とともにナトリウム(塩分)が失われ、血液中のナトリウム濃度が極度に低下した状態。頭痛や吐き気、食欲不振などの症状があり、重症化すると昏睡や痙攣などが現れることもある。

 気象庁の『熱中症予防情報サイト』では、「発汗量を超えた水分の摂取は危険をまねく。水分を過剰に摂取しないようにして、塩分の摂取も忘れないようにすることが重要」と注意を促している。

 十分に食事をとれない高齢者や、下痢をしている人などは、「経口補水液」で水分と塩分を補給すると効果的だ。経口補水液は脱水補正が目的のため、塩分が多めで糖分は少なめになっている。
座って長時間を過ごす時には「エコノミークラス症候群」にも注意
 避難生活が続くと、エコノミークラス症候群にも気をつける必要がある。熊本地震では地震が起きて1〜7日の間にエコノミークラス症候群が多発した。わずか1日の避難でも起きるおそれがあり、家の中でじっとしている場合にも注意が必要だ。

 長時間座ったまま過ごしたあと、歩きはじめたとたんに、急に呼吸困難やショックを起こし、ときには亡くなることもある――これが「エコノミークラス症候群」(深部静脈血栓症・肺塞栓症)と呼ばれる病気の典型的なケースだ。

 エコノミークラス症候群は、肺動脈が血栓によって閉塞することで引き起こされる。長時間狭い椅子に座ったままの状態を強いられると、足の血液の流れが悪くなり、静脈の中に血のかたまり(静脈血栓)ができやすくなる。この静脈血栓が歩行などをきっかけに足の血管から離れ、血液の流れに乗って肺に到着し肺の動脈を閉塞してしまう。

 エコノミークラス症候群と呼ばれるので「飛行機でのみ起こる症状」だと思われがちだが、実は飛行機だけではなく、車や列車などで座席に座って長時間を過ごす時や、オフィスでのデスクワーク、長時間の会議などでも起こると考えられている。

 糖尿病や高血圧、脂質異常症などのある人は、血糖や血圧のコントロールが不良であると血栓ができやすい。高齢者、肥満のある人、妊娠中や出産後まもない人、外傷や骨折の治療中の人、手術やカテーテルによる治療を受けた人でも発症リスクが上昇する。エコノミークラス症候群は適切な対策をすれば、100%近い確率で発症を防げる。
エコノミークラス症候群を防ぐための6つの対策
 血液は異物に触れると固まる性質がある。血管の内側は血管内皮という特殊な細胞で覆われており、血液が異物と接触するのを防いでいる。しかし、高血糖や高血圧などが原因で血管が傷つくと、血管内皮の膜が壊れ、血液が異物と接触して血栓ができやすくなる。

 また、足の筋肉は「第二のポンプ」といわれ、筋肉が収縮・弛緩を繰り返すことで足の血液の流れを促す。そのためウォーキングなどの運動をすれば血液の循環が良くなる。しかし座ったまま長時間を過ごし、体を動かさなかった場合は、足の血液の流れが滞り血栓ができやすくなる。

 エコノミークラス症候群の診断や治療に詳しい日本循環器学会によると、エコノミークラス症候群を予防するためにもっとも重要なのは、座ったまま過ごす時間が長引いたときには、立ち上がってウォーキングなどをして足の血行を良くすることだ。

 さらに、▽シートに長時間、座った姿勢で眠らない、▽ときどき足首の運動を行う、▽ふくらはぎのマッサージを行う、▽十分な水分を補給する、▽脱水を招くアルコールやコーヒーを控える――とった点に注意する必要がある。

 「運動などがままならない場合には、弾性ストッキングを適切な指導の下、使用することで予防効果は高まる。歩行時の息切れ、胸の痛み、一時的な意識消失、あるいは片側の足のむくみや痛みなどが出現した場合には、早めの医療機関の受診が勧められる」と、注意を呼びかけている。

 厚生労働省は、エコノミークラス症候群の予防のため「足の指でグーをつくる」「かかとを上下に動かす」といった運動や、水分補給をするよう被災者に呼び掛けており、ホームページにQ&Aなどの情報を公開している。

 つま先を地面に付け、かかとを上下に動かす、ひざを両手で抱え力を抜いて足首を回す、ふくらはぎを軽くもむ――といった軽い運動を意識して行うだけでも、エコノミークラス症候群の予防に効果的だ。

(mhlab)  
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