乳がんの新たな検査法を開発 マンモグラフィーの欠点を克服 神戸大
2018.10.02
 ごく弱い電波を発信する機器で乳房の表面をなぞるだけで、乳房の中まで立体的に写しだし、乳がんを高い精度で発見できる新たな画像検査法を、神戸大学の研究グループが開発した。

痛くない高感度の乳がん検査を開発

 神戸大学が、乳がん検診で使われている従来のマンモグラフィーのように圧迫感や痛みがなく、鮮明な立体画像が得られる検査法を開発した。来年度中に臨床試験を始め、検診での普及を目指す。

 マンモグラフィー検査は40歳以上を対象に集団検診として行われている。従来のマンモグラフィーでは、高濃度乳房の場合は、乳がんの可能性のある病変が乳腺組織に隠れてしまい、正常組織と区別できる割合が低下するという欠点がある。

 白人女性の約6割、55歳以下のアジア人女性の約8割が高濃度乳房とされている。また、X線による放射線を被曝するというデメリットがある。

 一方、超音波検査は、乳腺密度の影響を受けずに病変をみつけられ、痛みもないというメリットがあるが、超音波で得られる画像の再現性が低いというデメリットもある。

 研究チームが開発したのは、被曝がなく、造影剤も使用せず、乳房を圧縮することなく、乳房の自然な形状を保った状態で計測できる新たな画像検査法。

 わずか数秒以内に両側乳房全体の内部構造の3次元画像が構成されるという。

 これまでの臨床研究で、年齢、乳房のタイプによらず90%以上という高い割合で乳がんを検出できることが実証された。数cm以上の深さで500μmの乳がんを検出できるという。

 研究を進めているのは神戸大学数理・データサイエンスセンターの木村建次郎教授らの研究チーム。木村氏はこの研究により、2017年に日本医療研究開発機構(AMED)理事長賞を受賞した。

従来の乳がん検診の欠点を克服する技術を開発

 乳がんの2017年度の罹患数予測は約8万9,100人、死亡者数予測は1万4,400人。現在、30〜60歳代の女性における死因の1位となっている。

 しかし、2016年度の厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、乳がんを含めたがん検診の受診率はおよそ45%だ。

 「乳房の圧迫痛がある」「X線被爆がある」といった欠点が、乳がん検診の実施率の低下につながっている。

 研究チームが開発したのは「極微弱電波を用いたマンモグラフィ」。被爆せず、造影剤が不要で、従来の乳がん検診の欠点を克服する技術だ。

 コンピューター断層撮影(CT)の基本的な仕組みは、透過性が高い波動が物体内部で遮断・吸収されると、それがコントラストを生み、さまざまな角度からの画像を処理できるようになるというもの。

 これに対し研究チームは、乳がん組織と正常組織との界面で電波が反射することに着目。CTとは反対に、透過性が低く散乱の大きな波動を用いた3次元構造を逆解析する技術の開発に、10年以上前から取り組んでいる。

 開発に成功したのは、携帯電話の1,000分の1以下の微弱な電波を用いたマンモグラフィで、がん付近の血管で反射した電波の波形を解析し、数秒程度でがん組織の3次元画像を作ることができる。従来の方法の数千倍以上の性能があるという。

 これまで240人の臨床試験を実施し、乳がんの高い検出感度が実証されている。来年度中に臨床試験を始め、検診での普及を目指す。

 「乳がんで苦しむ女性が一人でも少なくなることを願い、このシステムの早期の実用化を目指している。世界に普及させ、乳がんが原因の死亡を世界でゼロにしたい」と、木村氏は話している。
神戸大学数理・データサイエンスセンター

(mhlab)  
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