インスリン分泌低下のメカニズムを解明 治療・予防に新たな道
2010年12月 8日 10:33
 東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科の植木浩二郎准教授らの研究グループは、インスリンによって活性化される「PI3K」という酵素が、インスリンの分泌を調節するカギとなることを解明したと発表した。

 糖尿病はインスリンの分泌低下と、インスリンの分泌を活性化させる酵素の働きの低下が連鎖し、悪循環におちいり悪化していく。この酵素の働きを高める治療法を開発できれば、膵β細胞の機能や量の低下を防ぎ悪循環を断ち、糖尿病を改善できる可能性がある。

“インスリンの分泌を調節するカギ”となる酵素を解明
 糖尿病の多くを占める2型糖尿病は、肥満などがもたらすインスリン抵抗性と、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌低下によって引き起こされる。2型糖尿病を発症する人では、β細胞の機能や量が加齢にともない低下することが知られている。

 研究者らは以前から、インスリンを分泌するβ細胞の量を維持するために、インスリンが必要となることに注目していた。糖尿病の人で、β細胞の自然死が増加し細胞量が減少することが知られているが、インスリンの作用不足との関連はよく分かっていなかった。さらに、β細胞の量が低下する以前から、インスリン分泌の低下がみられることが多く、そのメカニズムも不明だった。

 研究グループが着目したのは「PI3K」というβ細胞の中で作られる酵素。PI3Kはインスリンなどによって活性化され、骨格筋でのブドウ糖の取り込みやグリコーゲンの合成、肝臓での糖・脂質代謝、種々の臓器での細胞の自然死(アポトーシス)の抑制や細胞増殖に必要となる。

 肥満糖尿病マウスを使い実験を行い、インスリンの分泌が低下するより前に、PI3Kの働きが低下し、それが徐々に進行してインスリンの分泌量が減ることで、糖尿病も悪化することを発見した。

 また、PI3Kが制御する別の酵素を人為的に働かせると、それらの分子の発現が回復し、インスリン分泌も改善することも解明した。インスリン分泌を促すカギが「PI3K」にあり、糖尿病ではβ細胞でのインスリン作用低下によりPI3K活性が低下し、それがβ細胞量の減少やインスリン分泌低下へとつながる悪循環におちいっていることが示された。

 研究者らは「糖尿病の治療や予防では、膵β細胞の機能や量の低下を防ぐことも重要となる。PI3Kの活性を強める治療法を開発すれば、β細胞の機能改善や、骨格筋などでのブドウ糖の取り込みも改善できる可能性がある」と述べている。

 この研究は12月1日発刊の医学誌「Cell Metabolism」に発表された。

糖尿病におけるインスリン分泌低下のメカニズムを解明―2型糖尿病治療の新規治療法に直結する発見―(東京大学医学部附属病院、2010年12月2日)

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