高血圧:成因関与の遺伝子多型を発見 世界規模のゲノム解析
2011年9月19日 17:10
 横浜市立大学、愛媛大学、米ミシガン大学などの国際チームは、世界中で10億人に影響を及ぼしている脳卒中と心臓病の主な危険因子である高血圧に関連する遺伝子の解明に成功したと発表した。

 高血圧の発症については、肥満や運動不足などの環境因子だけでなく、遺伝因子の影響も大きいことがわかっている。こうしたなか、梅村敏・横浜市立大学教授、三木哲郎・愛媛大学教授、荻原俊男・大阪大学名誉教授、上島弘嗣・滋賀医科大学名誉教授、久保孝義・東北大学大准教授、岩井直温・国立循環器病センター部長らでつくる研究グループは、全世界で10億人以上が罹患する高血圧の原因遺伝子解明を目的に設立された国際共同研究組織に参画した。

 研究チームは、2009年から日本を含む世界24ヵ国の研究機関と共同で、世界のおよそ26万人の遺伝子を解析し、高血圧症の成因に関与する遺伝子を解明した。

高血圧の遺伝子を特定 予防や治療に光明
 高血圧症はもっとも多い生活習慣病で、罹患数は日本で4000万人、世界全体では10億人以上に上る。高血圧症は日本人の死亡原因の第2、3位である心疾患や、脳卒中などの原因となる動脈硬化症の最大の危険因子となる。

 高血圧症の9割は原因不明の高血圧症(本態性高血圧症)。食塩のとりすぎや肥満、運動不足、飲酒過多などの環境因子が原因であると、生活習慣の改善と薬物療法により血圧をコントロールできるが、本態性高血圧症の3〜4割の遺伝因子が関与していると考えられている。

 研究では、20万人以上の欧米人サンプルと約3万人の東アジア人、約2.4万人の南アジア人、約2万人のアフリカ人のサンプルを用いて、全ゲノムの250万人の一塩基多型と血圧との関連を調べた。全世界の200以上の研究機関と約300人以上の研究者が参加し、ゲノム研究上最大の研究となった。

 ヒトの遺伝子情報(ゲノム)は、数十億の塩基対から構成されるが、個々人でわずかな違いがある。その塩基配列の違いのうち0.1%ぐらいの頻度で認められるのが遺伝子多型で、そのうち一塩基だけ異なっているのが一塩基多型(SNP)。遺伝子多型の一部は病気のかかりやすさなどに影響し、遺伝的な個人差を知るてがかりとなると考えられている。

 その結果、欧米人で28種、東アジアで9種、南アジア人で6種のSNPが血圧と関連することがあきらかになった。これらは水・電解質バランスや腎機能に関連しており、はじめて高血圧との関連がわかったものもある。「SLC39A8」や「ATP2B1」など28種類をもつ人は、高血圧や左心室機能に関わっており、もたない人に比べて発症が2〜3割増えることをつきとめた。

 高血圧の発症にもっとも強い影響を及ぼすのは「ATP2B1」という遺伝子で、これを含む4種類の遺伝子の組み合わせによっては、最もリスクが高い人は、最も低い人の2倍以上高血圧になりやすかったという。

 遺伝因子が明らかになると、個々の人の遺伝子に合わせて最適な予防・治療を行う「テーラーメイド医療」を実現できる。高血圧の予防や治療薬の開発にもつながる成果として注目されている。

 この研究は科学誌「Nature」オンライン版に9月11日付で発表された。

Genetic variants in novel pathways influence blood pressure and cardiovascular disease risk
Nature, 2011 doi:10.1038/nature10405
大学院医学研究科 梅村敏教授らの研究グループが、全世界26万人以上を対象とした国際共同研究において、高血圧症に関連する遺伝子を解明(横浜市立大学 平成23年9月12日)
高血圧に関連する遺伝子の解明に成功(愛媛大学 2011年09月15日)

© 2014 Soshinsha.
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。

「なぜ運動が良いのか」メカニズムを解明 筋肉ホルモンが心臓を保護 2018.10.03
サッカーで糖尿病を予防 サッカーは骨を丈夫にできる最適な運動 2018.10.02
加齢や健康について周囲に話せるシニアは「幸せ度」が高い 意識調査 2018.10.02
乳がんの新たな検査法を開発 マンモグラフィーの欠点を克服 神戸大 2018.10.02
【9/10〜9/16は自殺予防週間】SNS(LINE・チャット)相談できます! 2018.09.13
「ミドリムシ」の成分が血糖値の上昇を抑制 期待できる健康効果 2018.09.13
糖尿病患者さんに向けて「血糖トレンド」啓発キャンペーンを始動 2018.09.06
「コーヒーは健康に良い」は本当か 何杯までなら飲んで良いのか? 2018.08.30
「第4回がん撲滅サミット」を11月18日(日)に東京ビッグサイトで開催 2018.08.30
介護予防に効果がある「百歳体操」の動画 大阪市が吉本興業と共同制作 2018.08.30
簡単な体力テストで糖尿病リスクが判明 握力やバランス感覚が重要 2018.08.24
「社会的な孤立」「閉じこもり」は危険 高齢者の死亡リスクが2倍超に 2018.08.07
「介護離職」が年間に9.9万人 働きながら介護は346万人 「介護離職ゼロ」の目標遠く 2018.08.07
世界の8.5億人が「腎臓病」 腎臓病の恐ろしさを知らない人が大半 2018.07.20
【健やか21】避難所生活で健康に過ごすための注意点(厚労省) 2018.07.20
「入浴」に健康増進のプラス効果 週5回以上の入浴が心血管を保護 2018.07.20
【健やか21】平成30年度 家族や地域の大切さに関する作品コンクール 2018.07.17
「熱中症」と「エコノミークラス症候群」を予防する方法 被災地で緊急課題に 2018.07.17
子育て中の親のスマホ依存が子どもに悪影響 スマホを置いて対話を 2018.07.17
「超加工食品」がメタボ・糖尿病・がんのリスクを高める 保健指導にも影響 2018.06.28
作りおきに「食中毒」リスク 冷蔵庫保管でも「においで判断」はNG 2018.06.28
「笑い」が糖尿病やメタボ、がんを改善 よく笑うと健康効果を得られる 2018.06.06
「ミドリムシ」からメタボを改善する成分 「痩せるホルモン」を促進 2018.06.06
乳がんと大腸がんを尿検査で早期発見 簡便ながん検査を実用化 2018.05.02
糖尿病の発症前に「慢性腎臓病」(CKD)は悪化 検査で早期発見を 2018.05.02
【連載紹介】何をどう食べるか―体験から得た震災時の食の"知恵袋" 2018.05.02
「プロポリス」が認知機能の低下を抑制 7年間の国際研究で判明 2018.04.27
【健やか21】平成30年度「児童虐待防止推進月間」の標語を募集します! 2018.04.27
夏の夜は「心筋梗塞」の増加に注意 季節の日照時間によって発症に差 2018.04.26
糖尿病リスクは「雨」? 久山町研究の成果で「ひさやま元気予報」 2018.04.19
Copyright ©1998-2013 Soshinsha.
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。
日本臨床内科医会プロジェクト
大人の健康生活ガイド facebook
更新情報配信中!
あなたの年代の“平均余命”
知っていますか??
お住まいの地域の「健康リスク」
“死因別死亡率”
病気別ガイド - 原因・症状・対策 -
あなたの脳は大丈夫?

第11回 読み書き「難読漢字・花偏」

難読漢字の読みに挑戦する問題です。何故そのような漢字になったのか調べてみるのも脳の活性化につながります。(2013/2/20)

 続きはこちら