DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
2011年10月26日 16:04
 糖尿病合併症の多くは血管障害によって生じるが、その血管障害において内皮機能の低下が最も初期に現れる。血管内皮機能は、上腕をカフで5分間虚血し、解放後の血管拡張反応を測定する「FMD(Flow Mediated Dilation)」によって評価され、主に動脈硬化性疾患のスクリーニングで重要な位置を占めている。

 一方、血糖依存性にインスリン分泌を促す消化管ホルモン「インクレチン」は、血管や臓器の直接的な保護作用があることが注目されており、とくにインクレチン関連薬の一つ「GLP-1受容体作動薬」は血管内皮機能を改善するとの報告がある。しかし、もう一つのインクレチン関連薬であるDPP-4阻害薬の血管内皮への影響については明らかになっていない。

シタグリプチン投与によるFMDへの影響について、心臓病学会で報告
 9月23〜25日に神戸で開催された第59回日本心臓病学会学術集会において、日本医科大学循環器・肝臓・老年総合内科の久保田芳明氏は、DPP-4阻害薬のシタグリプチン投与後のFMDの変化を検討し『2型糖尿病症例におけるシタグリプチンの血管内皮機能に及ぼす影響』として結果を報告した。

 FMDの基準値は6%とされることから(虚血を解放した後の血管径が虚血前より6%拡張すれば内皮機能は正常とされる)、FMD6%未満の2型糖尿病患者28名に対しシタグリプチン50mg/日を12週間投与、その前後のFMDの変化を比較した。FMD改善作用が既に報告されているピオグリタゾン服用中の患者や、インスリン療法・透析療法中の患者は除外した。また、副次評価項目として、HbA1cと空腹時血糖値、および内皮保護作用のある「アディポネクチン」、血管拡張に必要な一酸化窒素(NO)の内皮における産生を阻害する「Asymmetric Dimethylarginine(ADMA)」を測定した。

 患者背景は、年齢70.0±8.0歳、男性77.5%、BMI24.6%±4.2、糖尿病罹病期間4.4±2.0年。

12週間でFMDが有意に改善。血糖改善を介さない独立した作用
 12週後、HbA1c(JDS)は7.2±1.4%から6.2±1.6%へ有意に低下し、FMDも4.31±0.77%から5.31±0.88%へと有意に改善した(ともにp<0.001)。またアィポネクチンは12.91±9.34μg/mLが14.79±10.61μg/mLに上昇、ADMAは0.51±0.02μmol/Lが0.41±0.01μmol/Lと低下し、いずれも有意に改善していた(ともにp<0.05)。

 一方、ニトログリセリン投与後にFMDを測定して内皮非依存性の血管拡張反応を評価する「Nitroglycerin Mediated Dilation(NMD)」は、シタグリプチン投与前11.10±3.76%、12週後11.14±3.80%と有意な変化はみられなかったことから、FMDの上昇は内皮機能の改善に基づくものであると考えられた。


 また、FMDが1%以上改善した群を対象に多変量解析を行ったところ、HbA1cを含めて既知の動脈硬化危険因子との有意な関係は認められず、シタグリプチンには血糖コントロール改善を介さない独立した内皮保護作用があることが示唆された。

 同氏は、DPP-4阻害薬であるシタグリプチンはGLP-1活性を増強し、それによってアディポネクチン増加、ADMA減少、NO合成促進、抗炎症作用といったインクレチンの多面的作用をもたらすと考察。血管内皮機能が低下した糖尿病症例において、DPP-4阻害薬が血糖を改善するとと同時に、血管内皮機能も改善する可能性があると結語した。


関連情報

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